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はやく名探偵になりたい、ミステリーを普段手に取らない人がターゲットでしょうけど、無理やりの展開が多すぎ

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東川篤哉氏の作品です。この『はやく名探偵になりたい』は烏賊川市シリーズという、鵜飼探偵とその助手戸村を主役とした推理小説シリーズの一つです。これまでに紹介した東川作品と同じく短篇集です。これも深夜ドラマになってますね。

なかなかまとまった時間が取れないので、短篇集形式の推理小説は重宝します。烏賊川市シリーズは長編物もあるので、時間があれば読んでみたいですね。

はやく名探偵になりたい (光文社文庫)

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もう少し、烏賊川市シリーズについて解説すると、舞台が烏賊川市であり、いろんなキャラクターが主役となって巻き起こる事件の推理を行います。この『はやく名探偵になりたい』では鵜飼探偵が名推理を炸裂させます。トリックというよりは、他の人の勘違いやミスリーディングによる演出が多いです。これも東川作品の特徴ですね。

あらすじを書いておきます。ネタバレ注意です。

藤枝邸の完全なる密室

藤枝喜一郎は資産家ですが、家族がいません。このまま行けば甥の修作が財産を相続できる筈でした。ところが、喜一郎は最近めかし込んで出かけることが多くなります。もし喜一郎が結婚することになれば、自分の相続財産が減ってしまいます。修作は叔父の喜一郎の密室殺人を企てます。

首吊り自殺に見せかけて喜一郎を殺害した後、部屋のチェーンロックに細工し、あとは家政婦と一緒に第一発見者になれば完璧です。ロックを切って扉を無理やり開けた後で、こっそり細工を回収すれば完全犯罪でした。

ところが屋敷に鵜飼が現れて、鵜飼と共に殺害現場の第一発見者になってしまいます。さらに鵜飼はロープの結び目から自殺ではないことを見抜きます。鵜飼は言います。「修作さん、犯人はあなたです」と。密室の謎が解けたのかと思うとそうではありませんでした。修作が屋敷に入ってから雪が降り始めており、鵜飼が来た時には誰の足跡もありませんでした。犯人が逃げてないなら、目の前に居る修作以外に犯人はいないという推理です。まさしく、藤枝邸の完全なる密室。密室の謎については「そんなもん、僕は知りませんよ。きっとなにか、うまいやり方があったんでしょー」。

時速四十キロの密室

小山田幸助に依頼されて妻の恭子の浮気調査をしていた鵜飼と助手の戸村。恭子の密会先の別荘に張り込みます。いかにもな配送業者が現れ、ソファを運び出します。恭子は張り込みに気づいており、証拠写真を取られないために、このソファの中に浮気相手を隠して運び出します。配送業者のトラックをバイクで尾行する戸村。トラックが急ブレーキを引いたところで、後ろからバイクで衝突してしまい荷台に投げ出されます。荷台には血の海が広がっており、ソファの中では浮気相手が首を殺されていました。

ソファに入るところは、恭子も配送業者も見ており、戸村が犯人でないならトラックの荷台という時速四十キロの密室の中で浮気相手が殺害されたことになります。小山田幸助は孫と一晩中海岸沿いで夜釣りをしていました。トラックの通り道ですが、殺害は無理そうです。

鵜飼の推理は、マナーのなってない釣り人が投げ釣りで竿を振り上げた時に、たまたまトラックで通りかかり、ソファから顔を出した浮気相手の首に引っかかったというものです。折しも孫が初心者丸出しで釣竿を振り上げて釣りをしていました。

うーん、この事件はちょっと苦しいかな。

七つのビールケースの問題

『田所誠太郎』からネコ探しの依頼を受けて、愛車の青ルノーで依頼人のもとに向かった鵜飼と戸村。依頼人は留守でした。この付近でおかしな事件がたてつづけに起こっていることを知ります。まず、丸吉酒店からビールケースが7つなくなっています。石を投げ入れられて、窓ガラスを割られた家。深夜の当て逃げ被害。

鵜飼はこれらの事件をつなげる真実に至ります。すべての事件が起こった夜、2つの自販機と7つのビールケースタワーで、通りの一つが隠されていました。このために、タクシー運転手は道を間違えて当て逃げし、酔客も自宅を間違えて、開けてもらうために石を投げたら他人の家だったり、ビールケースがなくなったりしていました。

通りを隠したのは、田所誠太郎が殺されたところを隠して証拠隠滅する時間を稼ぐため。

この話は、さっきの話よりもさらに苦しいです。会話のテンポも悪いし、いろいろ盛りこんでも、通りを隠すアイデアからうまく膨らませられなかったんでしょう。

雀の森の異常な夜

深夜豪邸西之園邸の海に向かう道にて、話があると言われて呼ばれた戸村に、西之園絵里が何かを話そうとしているところ、車椅子とそれを押す男性が通って行きます。戸村と絵里はとっさに物陰に隠れます。しばらくすると、車椅子がすごい速さで戻ってきます。再び2人は物陰に隠れます。今度は車椅子には誰も乗っていません。

西之園家で車椅子なのは、絵里の祖父庄三だけです。車椅子が向かっていたのは崖です。つまり、庄三が崖から突き落とされ、空になった車椅子だけが犯人に押されて戻ってきたことになります。押していたのは男性であることから、西之園家の男性3人が犯人候補となります。西之園家の実質的な主である庄三の娘花代は、犯人に自首させるために、警察の前に探偵鵜飼を呼び事件の解決を依頼します。

庄三を殺した犯人は絵里で、車椅子を押していたのは家政婦の高田でした。正確には押していたのではなく、後ろに死後硬直した庄三を背負って電動車いすを操作していました。高田は絵里をかばうために、自殺に見せかけて死体を崖から投棄したわけです。

これは、戸村が一応目撃者なんですが、都合よく犯人を勘違いするようにだけ証言するところに無理がありすぎます。犯人を突き止めてからの展開もドラマなら楽しいんでしょうけど、読むと、コレ何?って感じです。

宝石泥棒と母の悲しみ

花見小路氏の邸宅で宝石泥棒が起こりました。孫娘が犯行時の音を聞いており、犯人は外に逃げていないことから、その日花見小路家に泊まっていた2人の男小松と溝口のどちらかが犯人であると思われます。ところが、2人の部屋を捜索しましたが、どこからも盗まれた宝石であるルビーは出て来ません。

この話だけは、すべて花見小路家のペット目線で語られます。真相は、何も覚えていないペット自身が酒を飲まされて犯人によってルビーを飲み込ませられていた、でした。さらに現場の2回にいけたのは、ペットが犬ではなく真鴨だからって。この話にいたっては、ファンタジーの域です。

全体的に苦しいなあ。今まで読んだ中では、最もがっかりさせられる作品でした。一番最近文庫本になったんですけどね。やっぱりコンスタントに良質の推理小説を書き続けるってのは難しいんでしょう。

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