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ライオンの棲む街~平塚おんな探偵の事件簿1~、あらすじと感想

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ライオンの棲む街 ~平塚おんな探偵の事件簿1~ (平塚おんな探偵の事件簿 1)

「ライオンの棲む街」は、実在する平塚市を舞台に展開されるユーモアあふれるミステリー作品。東川篤哉先生の新刊です。デビュー作では『烏賊川市』という架空の街が舞台でしたが、今度は実在する街で、地元民にしかわからないような地名が次々に出てきます。サブタイトルで1とナンバリングしていることから、続編が出ることを期待させます。

主な登場人物は二人、タイトルにある「ライオン」こと美人名探偵の生野エルザと、天然ボケで「猛獣使い」を自称する助手の川島美伽。2人のもとに舞い込む殺人事件を名推理?で解決していきます。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

第一話 女探偵は眠らない

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東京で働いていた川島美伽は、仕事に疲れ、恋に敗れ、貯金も持って行かれて会社を退職して、地元に戻って来ました。地元で探偵をしているという高校の同級生、生野エルザの事務所を手伝うことになります。

早速舞い込む依頼。依頼人は沼田一美32歳、依頼内容は婚約者である杉浦啓太26歳が浮気をしている可能性があるので調査して欲しい、というもの。休日似合う約束をしようとしても、あれこれ理由をつけて断られることから、怪しいと感じました。

杉浦を見張り、午後一時にあるアパートの一室に入ったところを張り込みます。夕方五時頃花柄ワンピースを着た美女が、その部屋に入っていきました。エルザは、その女の写真をばっちりカメラに収めます。20分後、ひどく慌てた様子の花柄ワンピの女が、急いだ様子でアパートを出て行きました。エルザは尾行を開始します。残った美伽が、アパートの中に入ったところ杉浦が殺されていました。

当然のごとく、部屋に入っていった女が犯人と思われ、鮮明な写真もありましたがそれらしい容疑者は出て来ませんでした。それもそのはず、部屋に入っていった女は、女装した杉浦だったから。午後一時から張り込んでいましたが、エルザは居眠りして女装して出ていくところを見逃していました。この辺りがライオンたる所以でしょうか。実は、犯人の沼田一美は密会現場を抑えるために、朝からアパートにずっと張り込んでいました。女装した杉浦を見て浮気相手と思い殺害、外にエルザ達が張っていることを思い出し、鮮明な写真を取られないように女装の服を借りてアパートからダッシュで逃げたというわけ。

第二話 彼女の爪痕のバラード

行方不明者の捜索依頼が舞い込みます。依頼者は山脇敏雄。行方不明者は山脇の彼女である北村優菜。

優菜が働いていたというスナックや、母と暮らす家、付きまとっていたという金持ちのボンボンなどに聞き込みを行なっていきますが、確たる情報は得られませんでした。そうこうしているうちに、依頼者の山脇が川で溺れ死ぬ、という事件が起こりました。直前の山脇の足取りを追うと、優菜が母と暮らす家の優菜の寝室を調べていたことが明らかになりました。エルザ達も、その部屋を捜索しますが、犯人につながる証拠は何も見つけられません。ただ、美伽が部屋を出た時にエルザが何やら雄叫びをあげます。

その夜、部屋に忍び込んだ真犯人とエルザ達は対峙します。エルザ達は部屋で待ち伏せしていました。エルザの中段回し蹴りが炸裂し、失神する犯人の菅谷良樹。エルザと山脇が、真犯人を突き止められた理由は、優菜のダイイングメッセージを聞いたから。そのメッセージは、目覚まし時計のアラーム音として残されていました。エルザと山脇は、偶然午後4時アラームが成る時間に部屋にいたために犯人を示すダイイングメッセージを聞くことが出来ていました。

第三話 ひらつか七夕まつりの犯罪

依頼人の悠木茜23歳は、ルームシェアしている元山志穂21歳が、茜の彼氏と浮気をしているのではないかと疑い、その調査をエルザに頼みます。ひらつか七夕まつりの日、エルザ達は志穂を尾行しますが、最後は尾行がバレてしまいました。

一方、そのひらつか七夕まつり会場では、大学講師の男が殺害されていました。動機から犯人と疑われる人物として、元山志穂が警察の捜査で出てきました。しかし、その志穂のアリバイを証明してしまっているのがエルザ達。しかし、見ていたのは後ろ姿だけで、途中で入れ替わった可能性がありるので、祭での足取りをもう一度調査します。

エルザ達の目論見通り、志穂と茜は入れ替わっていました。しかし、祭で屋台を出していた人たちに話を聞くと、たしかに志穂が来たと証言します。どういうことか。実は似た格好をして志穂と茜が時間差で同じ屋台を訪れていました。志穂は茜と入れ替わっている間に、被害者を殺害しつつ、最後にもう一度入れ替わって尾行を指摘することで自分のアリバイを作った、というわけ。

第四話 不在証明は鏡の中

依頼人は柳田美紗、依頼内容は占い師の金剛寺綾華に洗脳されている姉の良美を助けて欲しい、というもの。その占い師のもとに行くと、姉の良美は助手として働いていました。

エルザ達が動くまでもなく、良美は金剛寺から離れて、妹のもとに戻ってきます。姉の洗脳が解けたのは、金剛寺綾華に嵌められたことに気づいたから。エルザ達が金剛寺綾華に会いに行っていた時間に殺人事件が起きていました。被害者は、占い師の金剛寺綾華がペテンであるという事を告発しようとしていました。被害者が殺された時間には、エルザが占ってもらっていたので、絶対のアリバイがあります。

金剛寺綾華を名乗る占い師は2人組だったというオチ。厚化粧でダブついた衣装を見につけていたため、よく知らない人物では、入れ替わっても気付きません。姉が洗脳された占いは、鏡を使った仕掛けがあり、その仕掛けを発動させるためにはそっくりな占い師2人が必要だという事から、トリックがエルザにバレました。しかし、ミステリーでそっくりさんがいました、ってオチはありなんでしょうか。

第五話 女探偵の密室と友情

依頼人は、70過ぎの御老人日高静江。夫である玄蔵を1週間前に亡くしています。依頼内容は、夫を殺した犯人を捕まえて欲しい、というもの。玄蔵は、静江の寝ている部屋で首をつって自殺していました。部屋は密室で、ほぼ寝たきりの静江には殺害は不可能、ということで警察は自殺と判断しました。密室と言っても、窓には鍵がかかっていませんでした。ただ、静江の部屋は7階で、窓からの脱出は不可能に近い。

静江が夫がなくなっていることに気づいたのは、眠っていた時に扉ごしに声を掛けられてノックされたから。声をかけて起こしたのは甥の岡野宏一。こいつが犯人でした。扉を開けて飛び込んで来た宏一と、首を釣った夫が死亡しているのを確認した後で静江は気を失ってしまっていました。

トリックは、殺害現場が7階ではなく1階だったというもの。同じ間取りの部屋に、静江の寝室と全く同じ家具を配置して、静江を眠らせた後、玄蔵の首吊りを配置し、1階の窓から部屋を出ていました。静江は、鍵を開けてから気を失いましたが、そうならない場合は無理やり気を失わせる腹づもりでした。

これもエルザが推理するわけではなく、ビルの周りを嗅ぎまわっていると、1階のその部屋に住んでいた宏一の協力者がボロを出し、静江の部屋と同じ椅子を捨てたところを美伽に見られてしまい、とっさに美伽を襲い、部屋に連れ込んだところにエルザが乱入して全てが明らかになるというもの。

無理気味のストーリーが多いですけど、なかなか楽しめました。エルザが名推理していると見せかけて、運と力づくで真実に迫る様子はまさしく「ライオン」です。

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