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本日は大安なり / 辻村深月、一卵性双生児で双子の姉と入れ替わった新婦にはじまるいわくつき結婚式四重奏

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本日は大安なり (角川文庫)

「本日は大安なり」は辻村深月先生の小説。もともとは、4つの短編で掲載されたんですが、書籍化に当たり各編が時系列でつながるように再構成されています。優香主演でドラマ化もしています。

テーマは「結婚式」。舞台となるのはホテルアールマティという結婚式・披露宴会場です。4つの式場があるんですが、それぞれ個性的な人たちが同日に式をあげます。花嫁やリングボーイ、ウェディングプランナー、新郎などの立場から物語が描かれます。

どの結婚式も一筋縄では行きません。一卵性双生児で双子の姉と入れ替わった新婦、年下新郎の浮気を目撃して毒殺計画まで聞いてしまった新婦の甥、婚約破棄することになった男の浮気相手の式を担当してしまったプランナー、既婚者なのに不倫の果てに結婚式を上げることになってしまった男。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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加賀山妃美佳は新婦。最初に新婦である姉の鞠香の姿を見てウルっと来るシーンがあるのですが、新婦の名前が妃美佳であることが判明するところで入れ替わっていたことが読者に明らかに。ややこしいですが、一卵性双生児の妃美佳は結婚相手としての最上の条件に「鞠香ではなく自分を選ぶこと」を決めていたので、ここ一番で入れ替わった自分に気付くかどうか新郎を試しています。双子の心情はそれぞれ描かれますが、姉も妹の気持ちを組んで本気を出します。両親ですら気づかない入れ替わり。

鈴木陸雄は、貴和子という妻がありながら別の女と結婚式を上げることになってしまった新郎。妻との思い出が語られますが、いきなり新婦として電話をかけてくる女の名前が違ったことで読者は、そのことに気付かされます。結婚式を中止に追い込むために、ボヤ騒ぎを起こすために早めに会場入りして灯油を持ち込んでいます。

白州真空は叔母の結婚式に出席することになった小学2年生。叔母のりえの相手は7歳年下の26歳。周りから反対されている結婚です。真空はある日、新郎と職場の女が親しげに話している現場を目撃してしまいます。「りえには内緒だから」という会話を聞いてしまった真空は、どうにかして叔母を救えないかと、ない智慧絞ってがんばります。

山井多香子はアールマティで働くウェディングプランナー。担当する結婚式の新婦のわがままに再三振り回されます。不満な態度はおくびにも出しませんが、新婦の大崎玲奈はかつて自分の婚約相手が浮気した相手で破談になった原因でもあります。プロフェッショナルに徹して結婚式の準備を進めていく山井。もちろん当日もまったく聞いていなかった招待客の着付け手配を要求されたりとてんやわんやです。

4つの結婚式エピソードが動くのが、式場の火災ベルが鳴り響く時。一瞬鈴木が火を付けたのかと思わせますが、鈴木自身も火をつける直前にベルを聞いてびっくりすると同時に安堵しています。原因はキッチンのオーブンの故障。たびたび、オーブンの調子が悪いような伏線は出てきていました。ここからそれぞれにハッピーエンドとなっていきます。大安ですからね。

双子の結婚式は、新郎が非難するときに真っ先に客席に来て妃美佳の名前を呼びかけます。彼だけは最初から気づいていたんですね。妃美佳は自分を選んでくれた嬉しさと同時に、全精力をそそいだ入れ替わりがバレたことに敗北感も抱きますが、ハッピーエンド。

鈴木陸雄は、貴和子が差し向けた男に殴られ、涙ながら自分は既婚者であることを浮気相手に告白して反省します。ハッピーエンドといえますかね。

白州真空の叔母の新郎は浮気をしていたのではなく、こっそり婚約指輪を上げる演出について同僚に相談していました。ディズニーの白雪姫を模した結婚式で、毒林檎の中に指輪が仕込まれていました。全員が非難する中、そのりんごを持ちだした真空は、リングボーイの役目を無事果たします。これはいいハッピーエンド。

山井多香子は、最後の最後で結婚式が中断されたことからクレームを覚悟しますが、意外にも玲奈が山井のがんばりに感化され「これはこれで一生の思い出」と言ってくれたことで事無きを得ます。最後は、同僚から告白され、山井にも春が訪れたようです。

独立した話として面白いものを、うまく時系列に構成することで、ハッピーエンドに向かって盛り上げていきます。この手腕はさすが。

本日は大安なり (角川文庫)

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