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PK / 伊坂幸太郎、ゆるやかな繋がりを見せる三編からなる短編小説、あらすじと感想

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PK

「PK」は伊坂幸太郎先生による3つの中編からなる小説。掲載されている「PK」「超人」「密使」の3つの話は、それぞれ独立して雑誌に掲載されていたものですが単行本化に当たり、ある程度の繋がりがもたらされています。

独特の構成で、目まぐるしく語り手が変わります。明示されませんが、それぞれの語り手の関係性は無視できません。抗えない大きな力が裏にあるのはいつも通りですね。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

PK

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2002年ワールドカップ予選での日本対イラク戦で、その日冴えていなかったFWの小津が最後に華麗なプレイでPKを勝ち取ります。PKを蹴る寸前に同じチームのメンバーから声を掛けられ、小津は破顔します。

このときなんと声を掛けたのかを10年間も気にかけているとある政治家。秘書に当時の情報を調べさせます。スポーツ賭博、子どもの誘拐、スキャンダルなどの説があり、それらのために小津の試合中のパフォーマンスは冴えなかったという説が。そして小津が笑顔になったのは、それが解決したことを知らされたからとも。

とある小説家は、自分の小説を当たり障りのない表現に書き換えるように出版社ではなく、謎の人物から圧力をかけられていました。この小説家は政治家の父のようです。主義を貫き、頑として書き換えに応じません。

最終的に結局何がわかったという事もありませんが、3者のエピソードを絡めつつ「勇気が伝染していく」様子を描いています。小津は自分がPKをいれると、「みんな勇気が湧く」と言われて笑顔に。そしてPKを決めます。小説家は、自分が圧力に屈することなく小説を出すことで、勇気を家族や読者に示し、政策を曲げられようとしていた政治家もまた勇気を持って自分の意志を貫きます。

この政治家は27年前に子どもを助けたというエピソードが絡められ、他との繋がりが示されます。

超人

小説家の三島のもとに怪しいセールスマン本田が訪れます。彼は「自分には予知能力がある」といいます。メールで送られてきた知らない人物が必ず殺人を犯すというもの。そのメールの人物名は彼にしか見えません。最初は無視していましたが、メールに示された人物は必ず殺人者として逮捕されています。そのうち罪悪感に苛まれるようになった彼は、メールに示されたを前もって自ら始末するようになりました。

一方、とある大臣は自分は圧力にもめげずに政治活動を行なっていました。その大臣は、自分の人気を一躍高めることとなった27年前に助けた子どもと会食していました。会食しているレストランに、大臣の名前をメールで見た本田がやってきます。メールには日付と殺害する人数も書かれているのですが、この大臣の場合は数人ではなく一万人の被害者が出ると書かれていました。

ところが、レストランでは本田以外に大臣を殺そうとする面々がいました。彼ら殺し屋達を服の隙間に青い生地が覗くスーパーマンと思しき人物が倒して去っていきます。本田には「お互い大変だな」と声をかけて。そして、本田のもとには「大臣についてのメールは誤りでした」というメールが到着。

密使

握手することで他人の時間を6秒間奪う超能力を持つ大学生。日付の変わる瞬間に握手した回数✕6秒の時間を止めることができます。できるだけたくさんの人と握手できる仕事という事で子供向けアクションショーのスタッフを選びます。政治家にはなりませんでした。そんな彼のもとに、謎の人物から指令が。とある研究施設に忍び込み、研究しているゴキブリを盗み出して欲しいというもの。そのために大量の人物と握手させられます。謎の人物は未来から指令を出していると言います。研究施設から盗み出すゴキブリの免疫機能を使って大勢の人を病気から救うのが目的です。

一方、研究施設の中ではとある人物が説明を受けていました。その研究施設ではタイムトラベルについて研究を行なっていました。その研究成果として、人間はかないませんが小さなものであれば過去に送ることができるように。彼らの目的は、世界を襲う病気の侵攻を食い止めること。膨大な計算の結果、一匹のゴキブリを送ることでバタフライエフェクトよろしく、連鎖的に物事が進み結果としてその病気の拡大を防ぐことができることが判明。とある人物は、そのゴキブリを送ることで逆に死んでしまうことになるという事で「申し訳ない」という意味のことを長々と説明されていました。

研究施設に忍び込み、時間が止まっている間にいくつもの扉を開けて奥に進む大学生。目的のゴキブリを渡されたメモリーカードに入れ替えます。研究施設では、いざゴキブリを過去に送り込もうとしたその瞬間、ゴキブリが消え、1枚のメモリーカードが置かれていました。その中身は「あなたの今までのやり方よりも、より効率的に良い結果が得られます」という商品の広告コピー。

PK

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