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奇面館の殺人 / 綾辻行人、登場人物全員が外せない仮面をかぶり、首なし死体の正体を追います

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奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

全10作の館シリーズ9作目「奇面館の殺人」を読みました。以前、綾辻行人先生の「びっくり館の殺人」を読んだときは館シリーズという名称でまとめられていることを知りませんでした。

館シリーズは、建築家である中村青司が建物で毎回必ず生産な殺人事件が起こる、というもの。中村青司はすでに亡くなっていますが建物に呪いでも込めてたんでしょうか。怪しいからくりや隠し扉が満載の館です。本作も一筋縄ではいかないギミックが。肝心のトリックは、小説という形ならではの叙述トリックで読者を惑わせてきます。

奇面館の殺人は、全員が鍵のかかったお面をつけて似たような格好するという普通ではないシチュエーションで起こります。死体からは首とすべての指が切り取られて持ち去られており、残った人たちも声がくぐもって識別が難しく、判別に使えるのはお面の模様だけ、という状況。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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推理作家の鹿谷門実は、知人の小説家日向京介の依頼で代役となり、奇面館への招待を受けます。招待の内容は、奇面館で一晩過ごすことで200万円がもらえるという破格のもの。鹿谷はお金よりも中村青司作の館への興味から依頼を受けます。

館では主人の影山逸史が表情恐怖症という事で、招かれた客人6人が全員仮面をかぶることに。その夜招かれた客人は「ある条件」に合致する人物ということですが、結果として予期せず全員の誕生日が年まで同じで1日または2日違いでした。体格も似通っており、仮面を付けると判別は難しい。

その夜、一人ずつ主人の部屋に招かれ対談、怪しげなやり取りを繰り広げます。主人の目的は「自分そっくりの人物に会う」こと。影山家では代々、自分そっくりな人物に会うと幸運が訪れるという言われがありました。

その夜、最後に全員で乾杯し、影山家秘蔵のお酒を飲んで部屋に戻ると、眠気に襲われ目覚めるとかぶっていた仮面に鍵が掛けられていました。部屋にあったはずの仮面の鍵も消失。6人の宿泊客全員が同じように仮面を外せない状態に。主人の部屋に行くと、そこには死体が。首が切られて無くなっており、両手の指も全て切り落とされて無くなっています。

両手の指は、厨房のフードプロセッサで砕かれているところを、首は仮面を付けたまま屋敷の外に無造作に捨てられていたところを発見されます。調べたところ、屋敷に誰かが外から出入りした形跡はありませんでした。内部にいた人の犯行と思われます。犯人の候補は鹿谷以外の5人。入れ替わりの疑惑がずっと付きまとっていましたが、主人の首が発見されて、その可能性は否定されます。

猟奇殺人に見えましたが、真相はまったく斜め上。犯人の目的は主人の殺害ではなく、主人の持つ仮面の鍵でした。屋敷の隠し部屋にある仮面が犯人の目的でした。その仮面を手に入れるには主人の持つ鍵と、隠し部屋へ入るための仕掛けを作動させる必要があります。隠し部屋への仕掛けは、すべての部屋の窓の格子をいじるというもの。そのため、気づかれないように忍び込むために予め全員が飲むお酒のデキャンタ睡眠薬を混ぜていました。

犯人にとって予想外だったのは、睡眠薬を常用していた主人には効果が薄かったということ。部屋でもみ合っているうちに殺害してしまいますが、そのとき顔に指で深い傷を付けられてしまいます。それを隠すために全員に仮面をかぶせ、指をフードプロセッサで粉々にしていました。首を切り落として持ち去ったのは、主人の仮面が隠し通路の鍵だから。その仮面も眠らせた後で、外して持っていく予定でしたが、鍵が掛けられていた上にそれを発見することも出来なかったのです。

これらの偶然が重なって、あの殺害現場と仮面をかぶるという状況が生まれました。犯人はなぜ屋敷の隠し通路や隠し部屋の秘密を知っていたのか。その理由は、現在の主人の前の館の持ち主だから。読者に意図的に隠されていたのは、招待客のある条件が「全員同じ名前」という情報。そして、同姓同名の2代目の持ち主から、3代目の現在の持ち主に館が引き継がれていました。そのために、招待客の中に前の持ち主がおり、館の秘密を駆使して諸々をやってのけるという荒業が成立したというわけ。

世間の評価はあまり高くないようですが、私は楽しめました。必要な情報が読者にもたらされる順が、あまりに恣意的で逆にわざとらしいなとは感じましたけどね。そこが嫌な人も居るでしょう。

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