九井諒子先生のデビュー作となった短篇集。魔王を倒して平和になった世界で勇者が孤独にさすらったり、羽が生えて天使になってしまった女子中学生が進学に悩んだり、人間と共存するケンタウロスが馬車馬のごとく働きまくったり、大学で竜の育成・活用に悪戦苦闘したり。
全ての話が、一歩踏み込んだ感のある不思議な九井先生の世界ですね。9話で構成されています。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
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魔王と勇者のいた世界が下地にある短編がいくつか。魔王が人間を苦しめていた世界で、勇者が立ち上がり魔王を打ち倒し平和が訪れました。そんな世界では残念ながら勇者の地位は低いもの。魔王が去った後のお城をどうするのか、というのはまた新しい観点。いわばバラモス城なんて罠ばっかりで、人なんて住めたもんじゃありません。
宇宙人がやってきて魔王城となる話が良くできています。地球にすむ人間に、多様な生き物を提供する大きな装置を授けたら怠け者の人間がその装置の周りで獲物が出てくるのをじーっと待つだけになっちゃったり。しかたなく、人間に危害を加える動物を出すようにしたら、いつの間にかその装置が魔王城なんてことになっちゃって、貴重な装置を壊した人間が平和が訪れるっつって喜んじゃってます。
人間とケンタウロスが一緒に暮らす世界。ケンタウロスは睡眠時間も短く、脚も人間よりも早く、真面目でサボることもありません。そんな世界で2種族の衝突は必然。主人公の女性は人間で、ケンタウロスみたいに働けないことを悩んでいます。逆にそんな世界ではくだらないことでサボったり遊んだりできる人間がケンタウロスから見るとうらやましかったり。そんなもんなんですかね。
タイトルにある「竜の学校は山の上」はとある山の上にある大学のお話。世界でただひとつの竜学部を持つ大学。しかし、その学部の就職先は絶望的。頭をひねりますが、竜の活用法がまったくありません。移動や運搬手段としてはエサ代がかかりすぎる上に、肉は固くてまずく、卵は生臭くて食えたものじゃない。そもそも収率が悪すぎるという話ですが。「ゲームの世界だったら活躍できてるんですけどね」というメタ的なセリフ。役に立たないと諦めたらそこで終わり、大学の面々が日夜竜の活用法を考えて試行錯誤しています。
ちょっぴり毒のある話も混ざっていたりして、九井先生のストーリー構成能力の高さを伺わせます。それにしても、あんまりキャラの顔は書き込まない方なんですね。シンプルな線だけでの書き込み。
- 作者: 九井諒子
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