志村貴子先生の「わがままちえちゃん」は単行本1冊の読みきりサイズのマンガ。
タイトルにある「わがまま」というのは自己中心的ということではなく、いろいろな思い込みで周りを振り回すことを差します。それは物語中の他のキャラクターたちだけでなく読者も。
巻末にはリレーマンガの3つ目が。この単行本が出たとき志村先生の作品が8作連続で出ていて、巻末でそれぞれのキャラクターがクロスオーバーするリレーマンガが描かれていました。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
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さほからの手紙をななえおばさんが読むと、そこには中学に入ってちえちゃんという友達ができたこと、ちえちゃんは死んでしまった女の子の幽霊であることが書かれていました。さほが幽霊が見えていることを両親に話すと、ちえちゃんは亡くなったさほのお姉さんだと言われます。
視点が幽霊のちえちゃんからになって、他の幽霊と話しているときに携帯が鳴って目が覚めると、ちえちゃんは生きている普通の女の子でした。ここまでの話はちえちゃんの贖罪ともいえる夢。さほはちえちゃんの双子の妹でした。
ちえちゃんが「わたしはずるい人間です」と話し、さほが死んだことを謝りたいと思っているのは、さほちゃんが死ぬ直前に何かがあって「さほが死んじゃえばいいのに」と思ったことがあったから。
高校生になってから、幽霊が見える占い師の男と付き合い始めたちえちゃん、利根川まいという女の子と友達になります。占い師の男との交際はまぎれもなく淫行なので、男を糾弾するまい。
ちえちゃんがさほの幽霊と話すシーン、占い師の男がちえちゃんからさほの幽霊が見えてなかったくせにと言われるシーン、幽霊のさほの視点でちえちゃんを見るシーン、それぞれ矛盾しているように見えますが真実は一つだけ。その真実は、
さほが死んだのは交通事故でちえちゃんのせいではない
ちえちゃんが話している幽霊は実際にはいない
占い師の男は本当にさほの幽霊が見えていた
作中でちえちゃんが語るセリフがほとんど嘘で、嘘のさほと会話する場面が展開されます。占い師の男は、さほの幽霊が見えていたことを話し、最後は心の均衡を保つために都合のいい夢を読者に見せていたことが明らかになります。
ちえちゃんが心の均衡を保たないといけなかったのは、
猫のサリーがしんでしまったことや、
両親の夜の営みを見てしまったこと、
さほが告白した乾くんはちえちゃんのことが好きで、さほとそのことについて話せなかったこと
さほと喧嘩しているときに交通事故で死んでしまったこと
が重なっていったからですね。女の子の妄想に振り回される不思議な読後感の一冊でした。
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