ケンガンアシュラ 0/ だろめおん / サンドロビッチ・ヤバ子、拳願仕合トーナメント前のスピンオフ

勝った企業がすべてを手にする拳願仕合トーナメントを描く本編ですが、各キャラクターに焦点を当ててトーナメント参加までを描くスピンオフが「ケンガンアシュラ 0」。いきなり登場して猛者として描かれた各キャラクターの過去の一面を見ることができます。「ケンガンアシュラ 0」に登場するのは、

• 今井コスモ

• 若槻武士

• ガオラン・ウォンサワット(と鎧塚サーパイン)

• ハサド

• 英はじめ

• 片原滅堂と呉恵利央

という顔ぶれ。なんと言っても見所は、拳願仕合の頂点にいる片原滅堂と、かつて片原滅堂が拳願仕合を征したときに組んでいた全盛期の呉恵利央。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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今井コスモ

弟のメテオとともに普通の高校生活を送るコスモ。抜群の運動神経がありながら、弟のいる体育学校を選びませんでした。どこにでもいる普通の高校生っぽい一面が窺えますが、格闘技雑誌を見たときに表紙のチャンピオンを見て「オレはこいつと闘ってみたい」と不穏な発言。

その発言を受けてか、西品寺社長から誕生日プレゼントとしてそのチャンピオンとのスパーリングする時間を与えられます。幼い子供のように無邪気に喜ぶコスモ。

チャンピオンは、コスモを倒せば5倍のギャラを払うと言われて壊すつもりでかかっていきますが、まったく相手になりません。楽しかった、と言われたときに自分がコスモのスパーリングパートナーとして用意されていたことに気付く体たらく。自分のいる世界とは違う裏の世界の一端に触れたことで引退を決意します。

若槻武士

医学史の残る超特異体質を持つ若槻武士7歳は、データを取るために古海製薬の研究所にいました。テレビゲームに興じているように見えて、チタン製のコントローラーを軽々と握りつぶします。

未来の社長である古海平八は叔父である社長の許可を得て、武士と話します。本気を出すと何もかも壊してしまうから、という理由で自分を抑え込んでいた武士に、本気で打ち込んで来いと強気の発言。武士が一発腹に殴りこむと全治6か月の重傷。しかし、この1件で武士は力のコントロールのコツをつかみます。

ガオラン・ウォンサワット(と鎧塚サーパイン)

タイ王国の実質的支配者であるラルマー13世にボディガードとして仕えるガオラン。サーパインとは、ガオランがボクシングに転向する前にムエタイで試合をした時からの腐れ縁でした。わざわざミャンマーからタイまでガオランと戦うために来たサーパインに「仕事があるから」とつれない対応。

王の護衛になる権利をかけて挑んできたシュートレスリングの使い手をジャブだけで倒します。そのとき、サーパインならこの程度で倒れなかった、と発言したことからライバルとして意識していることがわかります。

ハサド

中東の某小国の第1位王位継承者だったハサドは、さらなる強さを求めて国を飛び出します。3年後、蕪木と仲良くビーフカレーを食べる姿が。本当にこんなことしてていいのか感を漂わせるハサドの過去。

英はじめ

聖ガッデム病院に潜入して何かの情報を探る英はじめ。天才的な外科手術の腕前で、すんなりと溶け込みます。

その後、一切外傷無く一撃で院長の心臓の鼓動を止めて殺害。「上」からの「命令」を受けて潜入した病院で、院長が犯罪者を拉致して臓器を出荷する臓器工場を営んでいたことを突き止めていました。

片原滅堂と呉恵利央

96歳の片原滅堂と91歳の呉恵利央が、25歳と20歳だった71年前から。

闇市を仕切って、関東最大のヤクザ白井組とも渡り合う片原滅堂は、組長から風呂敷に包まれた何かを受け取ります。組長の部下は止めようとしますが、「そいつを使ってやりたいことがあるんだろ？」「思う存分やればいい」と意に介しません。

その日の夜、闇に紛れて片原滅堂を襲う黒目の男。滅堂が撃った銃弾を難なくかわし、ドスで斬りつけると口で受け止めるという超人ぶりを見せます。その腕前から呉一族と見抜きます。

呉恵利央と名乗るその刺客は、一族などとっくに抜けて最強の暗殺者を目指していると語ります。すぐにトドメを刺さないことから、狙いは組長からもらったモノだということを看破。自分は死なないと確信していると自信満々な滅堂にとどめを刺そうとしたときに組長が現れます。

恵利央を雇ったのは、組長の部下でした。義に欠くことは許さない組長は部下を痛めつけ、その場を収めます。

滅堂は、組長から受け取ったあるモノを見せて恵利央をスカウト。そのあるモノとは拳願仕合の会員証でした。滅堂が日本を制するために欲していたもの。

恵利央は拳願仕合に挑み、はじめての敗北を喫して、プライドを捨てて一族に戻り1300年の間研鑽を続けてきた戦闘技術を習得し、頂点に至ったということがわかります。

スピンオフが面白いのは、やはり各キャラクターが精緻に作りこまれているからですね。読み応えのある1冊でした。

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