今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね / 榊原宗々 / 要マジュロ(1)(2)、殺意が感染していくサスペンスバトル恋愛ホラーマンガ

一風変わった目を引くタイトルのサスペンスホラー。

「今夜は月がきれいですが」の部分は愛の告白を表しています。夏目漱石が教師をしていたころ、生徒に「I love you.」の日本語訳を聞かれて「月が綺麗ですね、と訳せば日本人には伝わる」と言ったという、逸話から来ています。「愛している」なんて当時の男性が口にすることは考えられなかったんですね。

愛の告白からつながる「とりあえず死ね」という物騒な言葉は、本編に登場する「感染する殺意」を表しています。

登場人物紹介

キャラ名	説明
神城卓	主人公で掃除好きの高校2年生
花園魅香	神城が好意を抱いている幼馴染の高校2年生。学校中でモテている美少女
厚見	神城のクラス担任
山田	神城のクラスメイトで野球部のエース
ネイブ	学園祭前に食堂で働き始めたイケメン

1巻と2巻のあらすじと感想(ネタバレ注意)

特に取り柄があるわけでもない掃除好きの高校生神城が好きなのは、幼馴染で学校中でモテている花園。サッカー部キャプテンの池門に告白されて振るところを見た後で、自分も玉砕覚悟で次の日告白することを決意し帰宅。

その日の夜、家の窓の外で痴話げんかを目撃します。男性の様子が尋常ではなく、危険だと感じた神城は家を飛び出して止めようとします。すると、近づいてきた神城に向かって男は「来るな」「あなたの為に言っている」「でないと感染する」と叫びます。男に飛び掛かられたところで意識が途切れて、気付けばベッドの上で朝になっていました。

朝、花園と会った時に、不意に手に持った傘で花園の喉を突き刺そうとしている自分に気付く神城。昨日まで花園に抱いていた好意がそのまま殺意に変わってしまっていました。花園に告白しようとして出てきた言葉は「俺は君を殺したい」。そこに、昨日振られたサッカー部のイケメンキャプテンが現れて、自分が無視されたことに激高して神城に殴りかかります。神城がやりかえそうとすると、超人的な力が出てコンクリートの床が崩壊します。幸いにしてけが人は出ませんでしたが、神城は学校に行くことができなくなります。

しばらくして、花園が家を訪ねてきます。必死に殺意を抑えて「帰れ」と叫ぶと花園は家を出ていきますが、家を出た直後に車で拉致されてしまいます。ここでも超人的な力を見せて、車に追いつくほどの速さで走り始める神城。

向かった先の倉庫で車を降りた先にいたのは、担任の厚見と野球部のエース山田でした。神城が殺意に感染していることを見抜く厚見。厚見と山田もまた感染者でした。厚見と山田と3人での花園を巡る殺し合いのさなか覚醒する神城の力。その目で、筋繊維の一本一本まで見通す洞察力が開花します。山田を退けますが、厚見に殴られて気絶した神城。目が覚めると花園がとらわれていた椅子に骨だけの死体が残されていました。

取り乱しその場から離れようとすると、倉庫が爆発。走って度声ともなく走っていきますが、なんと後ろから花園ついてきていました。屋上で神城の「殺したい」という告白を聞いて以来、部分健忘に陥っていると話す花園。その後、厚見は知恵の輪を持った優男に殺されます。

普通に推理するなら、1話の神城の告白の時に、花園も「殺意」に感染したんでしょう。神城が花園と勘違いした骨の死体は山田。厚見を退けたのは花園だと考えると、神城が気絶して無事だったこともスッキリ説明できます。

厚見を殺した男ネイブが、学校の食堂に就職したという理由で唐突に登場したりしますが、そこから加速度的に日常が壊れていきます。

学園祭が始まって、花園に告白しようとする男が持っている手紙に書かれていたのは「死ね死ね死ね死ね死ね」という異様な文字。ネイブがなぜか傘をさしていると思ったら、多数の生徒が首と胴体を切り離されて振ってきます。神城が花園を守るために見てもらっていた園葉は毒入りたこ焼きでクラスメイトを毒殺。殺意であふれかえった学園祭の開幕ですね。

サスペンスホラーに幼馴染との恋愛や超人的な力といったスパイスを盛り込んだ意欲作ですね。通して読むとちょっととっ散らかってる印象があります。最初の夜、神城が助かっていた理由は謎ですし、校舎を破壊するほどの腕力もやりすぎのような。みんながあの腕力を出すなら、真っ先に学校崩壊ですからね。