裏サンデーの連載投稿トーナメントを勝ち抜いて連載化した伊勢ともか先生の「懲役339年」。
“教典”に記された神の教えを真理とする国。“魂の輪廻”・“生まれ変わり”も、この国の人々にとってはひとつの真理であった。自らの犯した罪により、懲役339年もの途方もない刑を課せられることとなった大犯罪者・ハロー。彼は20年服役した後死亡するが、319年もの刑期を残した魂は未だ浄化されておらず、すぐさまハローの“生まれ変わり”とされる赤子が、同じ監獄に収監される。永い年月の中、幾人かの“ハロー”とそれを取り巻く人々が紡ぐ物語。
誰でも一度は考えたことのある輪廻転生が、真理として存在する世界を描きます。いいことをすれば来世で幸せになれる、悪いことをすれば来世で落ちぶれる、善悪を説く価値観の一節として用いられる例えの一つですが、それが真理として強制されれば一転してディストピアになります。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
真理を否定しようとしたことで大犯罪者ハロー・アヒンサーに課せられた罰が懲役339年。人間の寿命を超えた懲役ですが、ハローが死んだ後もハローの生まれ変わりとされた人物が収監されることとなります。各話のタイトルから五部作となっており、339年を終えるまでに5代のハローが登場。
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初代から5代目まで
国の根幹を為す「転生」や「教典」を否定し、他の人を扇動して革命を起こそうとした罪で収監されたハローが収監されて20年、53歳で獄中死してから2代目が選ばれます。
「赤毛」「金の瞳」「脇腹の痣」などの身体的特徴が初代ハローと同じだという理由で2代目とされたハロー。2代目が病気で亡くなった後は3代目、4代目とそれぞれまったく特徴の違う人物がハローとして選ばれます。外の世界を全く知らず、生まれた時から犯罪者とされて収監されたハローがさされる祈りと、その祈りを見続ける看守や刑務官が償いの意味を考え続ける描写に私は惹きこまれました。
物語が大きく動くのが4代目から5代目、そして最後の6代目の登場へとつながっていきます。
ハローが収監されても、真理を否定しようとする革命勢力は残っていました。死んだ後に誰かに転生するという事は、生まれた時から記憶はなくとも過去の人物の誰かが転生した姿だということ。経典が定める前世により、完全に身分が固定されたディストピア。革命勢力は、出生局がまともに機能しておらず、前世という身分を金で売買する薄汚れた支配を壊さんと活動を開始します。
5代目ハローは革命組織「メーゲン」のリーダーであるウマリモの息子。真理を否定する勢力を取り締まる皇憲隊は、ウマリモ息子を捕えると、ウマリモの尻尾をつかむために、ハローの特徴である「金の瞳」を薬品を顔にかけて造り出し、ハローとして祭り上げます。
5代目が脱獄し、革命勢力のリーダーとして真理を否定し、民衆を「転生」や「教典」から解放するというストーリー。
焦点が当たるのはもちろん主人公であるハローなのですが、ラスボスとして登場するオレンジマンのキャラクターが強烈で素晴らしいです。もう一人の主人公と言っていいでしょう。
オレンジマンというキャラクター
皇憲隊に所属する大尉として登場するオレンジマン・トワイロード。位は大尉ですが、現役時代一度も任務に失敗することがなかったという国軍の軍人「シュワルツ大将」が前世とされているために、将来の昇進が約束されていて、階級を超えた権力を持っています。真理の恩恵を受けながら、その真理を心の中では全否定しているという人物。
国軍大将という最高位を前世に持つがために、自分がどんな手柄を立てたとしても、前世という枠組みに収まってしまい、自分が誰よりも優秀であるということを証明できません。大将という立場に甘んじて前世に屈するのではなく「神」になろうとしたオレンジマン。
傀儡ながら最高権力者である法皇を操れるポジションを手にし、真理からの解放と信仰の自由を法皇の口から民衆に語らせた後、皇帝として君臨しようとしました。
ラスボスでありながら、オレンジマンの目論見がうまくいっていれば、「真理」は否定されていたことになります。最後は、オレンジマンが皇帝に君臨したとしても自分の都合のいいようにルールを作るだけだ、と5代目ハローに看破されて打ち破られることになりました。
さいごに
画力は荒削りだなと感じる部分も多いですが、無駄のないセリフとコマ割り、ストーリー展開は目を見張るものがあります。連載が終わった後、4巻通して読んでみて、そう感じます。連載が終わってしまうと、なかなかみんなに手に取ってもらう機会がなくなっていきますが、ぜひ読んで欲しい作品。
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