烏賊川市シリーズの短篇集。本書のタイトルでドラマ化され、最近DVD & Blu-rayが出ました。烏賊川市シリーズは、鵜飼探偵とその助手戸村が主役だったんですが、この「私の嫌いな探偵」では助手の戸村に変わって、探偵事務所のあるビルのオーナーである二宮朱美が鵜飼と共に事件現場を巡ります。
ドラマでは、鵜飼が玉木宏、朱美が剛力彩芽というキャスティングでした。短編を膨らませて一話ごとのドラマにしたようですね。
小説のあらすじを書いておきます。ネタバレ注意です。
死に至る全力疾走の謎
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ビルの壁に激突して倒れている男を発見する鵜飼と朱美。ビルの壁に全力疾走して激突していくところを見ていた目撃者がいました。この事件の謎を追います。当日、男が全力疾走していた場所の上空で黒い浮遊物体が目撃されていました。
事件の真相は、激突したビルの向かいにあるマンションで、ある男を殺害したのちに向かいのビルにロープで渡って密室を作ろうとしたところ、マンション側のロープが切れてしまった、というもの。振り子のように地面に落ちていき、ブレーキをかけようとしているところを目撃されました。全力疾走ではなく全力で止まろうとしていただけでした。
探偵が撮ってしまった画
「夫の浮気の証拠を見つけて欲しい」と言われて男を尾行する鵜飼。女とアパートの一室から出てくるところを連写します。妻はその証拠に満足し帰って行きました。ところが、後日その夫が殺されるという事件が発生。夫は最初離婚を渋っていましたが、証拠写真を見ると何なら納得した様子で離婚に応じてきていました。
実は、鵜飼が連射した写真には、全く無関係の密室殺人事件のトリックが写っていました。家で殺害された大学教授ですが、家に至る足跡が教授本人の物一つだけだった、という事件です。連射した写真に写っていたのは遠くなので誰なのか判別こそできませんが、後ろ向きに歩く人間の姿でした。
夫はそれを見て犯人に思い当たり、離婚の慰謝料とするために犯人を脅迫していました。そして、その犯人に殺されてしまった、というわけ。
烏賊神家の一族の殺人
烏賊神神社の神主から依頼があるという事で、鵜飼と朱美が訪れた時に殺人事件が起こります。神社はイカ漁にまつわるものであり、拝殿の裏には「逆さまの祠」と「烏賊さまの祠」という2つの祠があります。
神主からの依頼は、息子の真墨(ますみ)の婚約者を調べて欲しい、というもの。神主には真墨意外に2人の娘、伽墨(かすみ)と墨麗(すみれ)がいます。神主からの話を聞いていると、巫女アルバイトが飛び込んできて、「逆さまの祠で人が死んでいる」と言います。鵜飼と朱美が急いで逆さまの祠に向かいますが、死体はどこにもありませんでした。戻ってきて巫女アルバイトに詳しく話を聞きます。殺された女性は、背中を刺され、逆さまの像というイカの銅像を手に持ってキスしているかのように見えた、という証言を得ます。
死体は消えましたが、逆さまの像がどうなっているのかを調べるために、再度祠に向かうとさっきはなかったはずの死体がありました。
実は最初に鵜飼と朱美が調べたのは「烏賊さまの祠」でした。祠にむかう道に烏賊の絵で目印があるのですが、足を下にした烏賊が実は逆さまの方。鵜飼達が勘違いしているという事に気づいたので、後から死体を移動していました。最初の巫女アルバイトの証言は、被害者のダイイングメッセージを示しています。イカに口をつけると伽の字になります。
死者は溜め息を漏らさない
ド田舎に棲む中二病全開の少年が、学校の帰り道に崖から落ちて亡くなる男性を目撃しました。男性は落ちた後で、首からエクトプラズムらしきものを出していました。亡くなった男性の遺族から依頼を受けて調査を開始した鵜飼。崖の上に住む老人のところを訪れると、何やら空に向かって箒を振り回していました。崖の方から叫び声を聞いたという証言を得ます。さらに、通報していたのもこの老人でした。
次に中二病全開の少年から、件のエクトプラズムの証言を得ます。朱美は一笑に付しますが、鵜飼はその話を聞いて真相に至ります。
亡くなった男性は、崖の上の清流で蛍を捕まえて持って帰るために、口の中に入れていました。それを見つけた老人は、箒を持って追いかけます。逃げたところ誤って崖から落ちてしまった、というのが真相です。少年が見たエクトプラズムの正体は、死体の口から出た蛍たちでした。最初老人が、空に向かって箒を振り回していたのは、蜘蛛の巣を払うためでした。蜘蛛がいると、蛍が一網打尽にされてしまうためです。
うーん、蛍を口に入れます?
二〇四号室は燃えているか?
ある女性から浮気調査依頼を受けます。調査対象は、バーの経営者の超絶イケメン。そのイケメンが街で派手な色のドレスを着たモデルのような美しい女性と歩いていた、ということでその正体を突き止めて欲しい、というのが依頼です。鵜飼は、イケメンに張り付いて調査を開始します。朱美がたまたま街であった時も尾行の最中でした。鵜飼についていくと、イケメンはアパートの二〇四号室に入って行きました。鵜飼は空き家に移動して、窓から部屋の様子を伺います。すると、赤いドレスを着た女性とイケメンが2人で密着しているところが目撃出来ました。その直後、部屋から煙が発生します。火災かと思われて、部屋に飛び込んだところ女性の姿はなくイケメンが刺殺されていました。
実はイケメンは鏡と服の片側にドレスを貼りつけたものを使って部屋で二人が立ったまま密着していくように見せかけていました。更に言うとイケメンは女性でした。火災に見えたのは、赤いドレス部分をはがして燃やしたため。視察されたのではなく、自殺でした。鵜飼たちを目撃者にして、架空の女性に罪を着せて、保険金目的で自殺していました。依頼してきた女性は、その自殺の片棒を担いでいました。
全体的に無理のある話が多い気がしますけど、よくこれをドラマ化する気になりましたね。TRICK的な感じなんでしょうか。たぶん、本書を読んでからであれば、剛力さんのファン意外はドラマを見ないでしょうね。それにしても、浮気調査依頼が多い。
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