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Nのために / 湊かなえ、あらすじと感想

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Nのために

「Nのために」は湊かなえ先生のいわゆるイヤミスです。イヤな気持ちになるミステリーという新しいジャンル。この作品も、湊シリーズを踏襲しており、各登場人物の告白というか、各自の視点で見た事件の考察が語られます。

一流商社につとめるサラリーマンとその妻が、暮らしているタワーマンションの一室で殺害されるという事件が起きます。この事件の関係者の告白が続きます。登場人物は以下の通り。みんなイニシャルにNが入ります。

  • 野口貴弘、商社に務めている。安藤の先輩であり、将棋のライバル。物語の最初で妻と共に殺害される。

  • 野口奈央子、貴弘の妻。資産家出身で世間離れしたところがある。

  • 杉下希美、事件が起こったときは大学4年生。安藤と共に石垣島旅行のダイビングで野口夫妻と知り合う。

  • 安藤望、商社での貴弘の後輩。杉下とは、学生時代に同じボロアパートに暮らした縁で将棋やダイビングに感心を持つ。それをきっかけに野口夫妻と知り合う。

  • 西口真人、杉下や安藤と同じボロアパートで暮らす小説家志望の大学生。2年留年している。野口貴弘を殺した罪で服役する。

  • 成瀬慎司、杉下の高校の同級生。フレンチレストランでアルバイトをしている。

あらすじ(ネタバレ注意)

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事件は、流産で心と体を病んだ奈央子を励ますために、野口夫妻と杉下と安藤の4人で野口宅でパーティーをする予定だった日に起こりました。早めについた杉下が家にあがり、防音の部屋で貴弘と2人で将棋について安藤対策で戦略を練っているときに、西口が花屋のふりをして来訪。実は、西口と奈央子は不倫をしていました。

野口夫妻の住む部屋は独特で、中から出られないように外から鍵を掛けることができます。夫である貴弘が妻の精神状態を気にして部屋に付けたものです。閉じ込められている奈央子を、部屋から出すために西口は来ました。連れだそうとしたところを貴弘に目撃され、激昂した貴弘に奈央子は刺殺されます。次に標的となった西口が、反撃しようとして燭台で貴弘を撲殺しました。

以上が事件関係者全員の供述をつなぎあわせて得られる事実です。当日、その部屋に出張レストランサービスのために後から来た成瀬の証言もそれを裏付けていました。しかし事件の真相は全く異なるものです。全員が自分が大切に思う「N」のために、嘘の証言をしていたためにそうなりました。

西口は奈央子を助けて、2人で駆け落ちするつもりでした。しかし、杉下はそのことを当日わざと貴弘に漏らします。貴弘に西崎を殴らせ、傷害罪で貴弘を警察につきだせればいいと考えたのです。これは貴弘の部下である安藤のためでした。貴弘は後輩の安藤をやっかみ、僻地に飛ばそうとしていました。

予定時間より早めに野口夫妻の部屋を訪れた安藤の行動によって、すべての歯車が悪い方向に噛み合います。杉下達が自分だけを除け者にして、野口宅で何かを企てていることを感じた安藤は、部屋の外からチェーンで鍵を掛けたのです。これにより、野口夫妻と西口、杉下の4人は部屋に閉じ込められることになりました。

西崎を殴る貴弘を止めようと、花瓶を持った杉下。大きな音を立てて注意を引くだけのつもりでしたが、それで夫を殴って殺すつもりだと感じた奈央子は、夫の命を他人に奪われるくらいならと自ら貴弘を後ろから撲殺します。その後、包丁で自分を刺して自殺していました。最終的には、料理を届けに来た成瀬によって部屋の鍵が開けられて2人が解放されることになりました。

西口は奈央子の名誉を守るために、自分が貴弘を殺したと証言。成瀬は部屋に来た時に外から鍵がかかっていたことに気付いたが、鍵は開いていたと証言。

最終的に10年後、西口が服役し、安藤は順調に商社で出世。杉下は、末期ガンにかかり、成瀬がお見舞いに来るようになります。

登場人物がそれぞれみんな病んでるのは、いつも通りですね。ただ、この小説はちょっとキレが悪かったです。1つの事件にフォーカスしていたためか、同じような事件の背景が何度も語られるんですよね。もちろんちょっとずつ変わって新たな事実が盛り込まれるんですけど、読んでいて苦しいと感じました。

Nのために

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