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水底フェスタ / 辻村深月、気持ち悪いくらい濃い〜村社会と非日常の音楽フェスの話

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水底フェスタ (文春文庫)

辻村深月先生の作品です。オーダーメイド殺人クラブでは、ややこしくて複雑な女子中学生のコミュニケーションを描いていました。本作「水底フェスタ」は、睦ツ代村という音楽フェスが観光の目玉になっている過疎地で、村長の息子を主人公とした気持ち悪いくらい濃い〜村社会の絶望を描きます。

睦ツ代村は日本によくある何の見どころもない過疎った田舎ですが、日馬建設という建設・観光開発会社と代々の村長が組んで村おこしに取り組んでおり、現在は4大音楽フェスティバルの1つであるムツシロックなる潤っている村です。人口も少ないので、このイベントを中心に各家はそれなりに余裕があるようです。

主人公の湧谷広海は、2年前に村長に就任した飛雄の息子であり、専業主婦の美津子を母に持つ高校生。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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村の同級生と参加したフェスで、織場由貴美という村出身の女優・モデル・歌手を見かけた広海。由貴美は、広海の8歳年上です。フェスが終わってから村には、村を出たはずの由貴美が帰ってきているという噂が流れていました。

気分転換に村の誰も居ない所で一人音楽でも聞こうと家を出た広海は、そこで由貴美と出会います。意味深なセリフで広海を誘惑・挑発する由貴美。「村を売る、復讐のために帰ってきた」と言われ、広海の心が動きます。由貴美から明かされたのは、父の飛雄も含めて睦ツ代村では、毎回不正選挙が行われているという事です。

由貴美のいう事が信じられず、ひとまず父の潔白を証明するためにいろいろと動き始めた広海に、信じがたい衝撃の事実が次々に飛び込んできます。

  • 村の選挙不正は本当で、代々買収資金を使って4つの家で村長職を回していたこと

  • 由貴美の母は飛雄の愛人で、人畜無害に見えた美津子に自殺に追い込まれていたこと

  • 由貴美の父親は飛雄であること(後に間違っていることが判明)

執拗に由貴美を見たがっていた日馬建設社長のドラ息子であり広海の友達の達哉。その達哉に由貴美と2人で居るところを見られ、激昂した達哉に殴られた所で由貴美が達哉を殺してしまいます。広海と由貴美の動きは村中に筒抜けで、気持ち悪いくらい監視されていました。日馬建設とこれからもうまくやっていくために、達哉の死を村ぐるみで隠蔽しようとします。由貴美と2人で村を抜けようとする広海ですが、逃げ切れないと悟った由貴美は湖に飛び降りて自殺します。

最後は広海が、村の不正の証拠を持って達哉の兄である京介に会いに行く所で終わり。

こんな風にあらすじを書くと広海が一貫した行動をとっているように見えますが、実際には何も見えていないダメなボンボンって感じですね。京介から村の不正を暴くように持ちかけられるも、フェスが無くなると広海が悲しむと思い、由貴美と接触しようとしていた達哉が不憫でなりません。由貴美も、広海を弟として思っているように見えて、東京で返り咲くために村を売ろうとしていただけですし。

それにしても、フィクションとはいえこんな濃い〜村社会の気持ち悪さを伝えてくる辻村先生の文章力に恐れ入ります。

水底フェスタ (文春文庫)

水底フェスタ (文春文庫)

水底フェスタ

水底フェスタ

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