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名前探しの放課後 / 辻村深月、2回読んでしまう。辻村先生の技工が光ります

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名前探しの放課後(上) (講談社文庫)

「名前探しの放課後」は辻村深月先生の長編小説。上下巻に別れており、私がこれまで読んだ辻村作品の中では最長。

高校を舞台にしており、タイムスリップを扱ってます。これまで読んだ作品とはまたまったく毛色が違いますね。今まで読んだのは「オーダーメイド殺人クラブ」「水底フェスタ」「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」「光待つ場所へ」の4作品。

本作は、私が未読の「ぼくのメジャースプーン」と繋がりがあるそうです。既読だと後半カタルシスを得られる部分があるみたい。未読でも楽しめました。私が他作品とのつながりで気付いたのは、終盤に出てきたピアノが得意な松永くんでしょうか。光待つ場所へに登場しましたね。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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藤見高校1年生の依田いつかは、ある日突然自分が3ヶ月前に戻って来ていることに気付きました。3ヶ月後までの記憶だけを持っている状態となったわけです。甥っ子はまだ生まれておらず、撤去されているはずの看板は残ったままです。そんな中、記憶の中にあるのは、これから先自殺する同級生のことについて。

突拍子もない話ではありますが、いつかは同級生の自殺を止めるために行動を開始します。最初にこのことを話したのは、藤見高校で唯一同じ中学校出身の坂崎あすな。話したことはありませんでしたが、中学校の自由研究や電車での読書からあすながタイムスリップに対する知識が豊富であろうと考えたから。

あすなは荒唐無稽ないつかの話を真剣に聞き、自殺を止める協力を約束します。あすなの次には、唯一の友達長尾秀人に話を持って行きます。彼もいつかが嘘をつくような人間ではないと知ることから、協力します。秀人の人脈で秀人の彼女の椿と天木敬もメンバーに加わります。

肝心の自殺する同級生については、その部分だけいつかの記憶からすっぽり抜け落ちていると言います。手がかりは少ないですが、終業式の日に自殺するという事だけは覚えていました。自殺すると思われる第一候補が小瀬友春からいじめを受けている河野基。

ここからは、河野がいじめを受ける原因になった水泳フォームの矯正や友達付き合いを通じて、自殺が起こらないように全員で行動することに。河野とは、いつかが先生となり、同じく水泳が苦手だったあすなも練習に付き合います。終業式の後には、あすなの祖父が営業しているレストラン「グリル・さか咲」では、クリスマスパーティが開催され、あすなは練習していたピアノを披露します。

3楽器の始業式後、あすなの唯一の肉親である祖父が倒れた時に、真実が明らかになります。ここまでで読んでる人はなにか違和感を覚えていたはず。それもそのはず、視点がいつか主体から明日な主体に変わっていましたからね。いつかの記憶はなくなっておらず、クラスメイトのあすなが自殺することを覚えていました。それを防ぐために、あすなに話しかけ、同級生の自殺を防ぎたいという話を持ちかけていました。もちろん秀人たちはこのことを知っています。全員の協力で、あすなは祖父が亡くなる前に病院に間に合います。それが影響してか、いつかの記憶とは異なりあすなの祖父が亡くなることはありませんでした。

ここまででハッピーエンドとなり、普通にタイムスリップ物として読んで楽しめる中身になっているんですが、「ぼくのメジャースプーン」を読んでおくとある事実に気づくようです。いつかは秀人の能力で暗示にかけられていた?んですかね。見た目だけで好きでもない女性と付き合うことを繰り返すいつかにたいして、「好きな女性が3ヶ月後に自殺するとしたらどうするか」という暗示を掛けたみたい。しかし、いつかは秀人がまったく予想しない女性のために行動を始めたのでした。まったく関わりの見え無かった坂崎あすなですが、いつかが大怪我をして水泳が続けられなくなった時にただ一人いつかの気持ちを汲む行動をとっていたんですね。

いつかがあすなを救おうとしてることがわかって読み返すと、納得感があります。二重においしい作品でした。

名前探しの放課後(上) (講談社文庫)

名前探しの放課後(上) (講談社文庫)

名前探しの放課後(下) (講談社文庫)

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