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ツナグ / 辻村深月、あらすじと感想、続編早く単行本化しないかな

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ツナグ (新潮文庫)

辻村深月先生の映画化もしている短編小説。タイトルにあるツナグとは、死者と一度だけあわせてくれる人のことを指します。使者と書いてツナグと読みます。

死者と会うためのルールは、

  • 生きている人が死者に会うことができるのは一度だけ

  • 一度生きている人に呼び出された死者は、それ以降他の人が呼び出すことはできない

  • 死者は、生きている人から会うことを望まれた時に断ることもできる

というものです。各話で思い思いの死者へ会いたいという意思を持った人たちが使者に依頼してきます。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

アイドルの心得

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依頼人、平瀬愛美は子供の頃から家庭でも、社会に出てからも会社で疎外されています。望まない合コンでお酒を飲まされて放り出された時に偶然出会った人気アイドルの水城サヲリに助けられたという過去を持ちます。水城サヲリは、ある日心不全で無くなっていました。接点はまったくありませんでしたが、愛美は水城サヲリと会うことを希望します。水城サヲリの返事はOK。見ず知らずというか、記憶に残っていない愛美と会うことに。

水城サヲリには、出会った記憶こそありませんでしたが、テレビに写っていた頃に手紙や贈り物をもらったことを覚えていました。その手紙を読み、愛美が自殺しようとしていたことから、それを止めるために会うことにしていました。愛美は、水城サヲリの言葉を胸に強く生きていくことを決めます。

長男の心得

依頼人、畠田靖彦は母のツルをガンで亡くします。靖彦は、母が幼い頃に亡くなった自分の父親にあったことを聞いていたことから、自分も亡くなった母に会おうと使者に依頼してきます。目的は売ることにした山の権利書が見つからないから場所を聞き出すため、ということでしたがこれは嘘。ツルの病名を本人や息子、姪に教えなかったという自分の判断の是非を尋ねるためでした。ツルの答えは「あなたは優しい」というもの。

そこから、靖彦が心に抱えている悩みを母にぶつけていきます。太一が跡取りとしては頼りないこと、弟の久仁彦の方が優秀なのに継いだのは自分出会ったという事。ツルはそれに対しても、太一はいい子だ、久仁彦は現在の仕事が性に合っていると答えます。実際にそうで、太一はまわりからの人望があり、久仁彦は優しい兄が継いだことに何の不満もありませんでした。そして、母が父に会いに行ったのは、孫である太一を会わせるためであったことを聞き出します。

靖彦は、自分も父と同じように太一の子に会う時が来ることに思いを馳せます。

親友の心得

依頼人、嵐美佐は親友であり演劇部のライバルでもあった御園奈津を亡くします。美佐は今で言うところの典型的なマウンティング女子で全てに置いて奈津よりも上でなければ気が済みません。ところが、3年生が引退後、劇のオーディションを受けたところ選ばれたのは美佐ではなく、奈津でした。気づけば、自分の話は誰もちゃんと聞いていないのに、奈津が話し始めるとみんなが耳を傾けて話を聞くなど、ちゃくちゃくと美佐の劣等感が刺激されていきます。

登下校の途中の道に、犬を洗うための水道があるのですが、水を出しっぱなしに冬場は凍結して危ないという事を知っていた美佐はある日、その水道の栓をわずかに開けっ放しにします。そこを通った奈津は、その日自転車事故で無くなりました。美佐は、使者に依頼して奈津と会います。事故の原因は凍結ではありませんでしたが、奈津は美佐が悪意を持って水道を操作していたことを知っていました。しかし、そんなことは会っている間おくびにもだしません。美佐は謝ることや腹を割って話すことが出来ず、唯一の親友に戻れるはずだった機会を喪失します。

そのことに気付くのは、使者から奈津のメッセージを受け取った時。奈津が全て知っていたことを知り、泣き崩れます。

待ち人の心得

依頼人、土谷功一は婚約者である日向キラリに会うことを望みます。日向キラリは亡くなったのではなく行方不明。名前も偽名でした。しかし、使者に依頼すると日向キラリが本当に死んでいたことがわかり、会うことに。日向キラリの本名は鍬本輝子。実家を飛び出して、偽名で東京に出てきて功一に出会ったという経緯がありました。功一と付き合うことになり、プロポーズされたことで、実家に話しに行くために帰る途中のフェリーで事故にあって亡くなっていました。

キラリは、功一が7年たった今も自分を待ち続けていることを知り、会うことを決意します。最後は、「大好き」という言葉を残してキラリは消えていきます。功一はキラリの遺品を持ってキラリの両親に会いに行くことを決めます。

使者の心得

この話だけは、他の話と毛色が違います。使者である渋谷歩美の視点で、上記の依頼をこなしていく様子が描かれます。といっても歩美はまだ、見習い使者でした。祖母から使者を継ぐために手伝いをしていました。祖母に言われるままに使者としての仕事を進めていくうちに、自分の両親が亡くなった真実に気付きます。歩美の両親は、鍵のかかった自宅で母が絞殺、父が舌を噛んで自殺という最後を遂げていました。

両親が亡くなったのは使者の力の元である鏡の使い方を誤ったため。所有者以外が鏡を覗き込むと、覗き込んだ人と所有者の2人が死んでしまう、というルールがありました。そして、祖母は一度は息子に譲った使者の力を、息子が死んでから再び自分のものにし、現在歩美に譲ろうとしていました。歩美は、祖母が気づかなかった両親の死の真相に気付きます。それは、母が鏡のルールを知らず、父を(歩美からみた)祖父に会わせようと鏡を使おうとしてしまったというものでした。

その話を歩美から聞いた祖母は、歩美に使者の力を引き渡す儀式を始めます。

読後感はなかなかよかったです。心情を丁寧に描く様子はさすが。実は、この「ツナグ」今年に入ってから続編が始まっています。早く単行本化しないかな。

ツナグ (新潮文庫)

ツナグ (新潮文庫)

ツナグ

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