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都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ / 天祢涼、世襲の都知事が難事件を次々解決

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都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ

セシューズ・ハイシリーズ2作目の「都知事探偵・漆原翔太郎」。国会議員だった翔太郎が今度は、東京都知事として八面六臂の活躍を見せます。作者の天祢涼先生は私が最近注目している新進気鋭のミステリー作家です。

セシューズ・ハイシリーズと言っても2作しか出ていないんですが、各話でレギュラーの登場キャラクターはみんな同じ。ワトソン視点で、天然か計算づくかわからない爽やかイケメンで弁舌の立つホームズに振り回されるのを楽しめます。

キャラクター紹介

雲井進

議員時代に続いて、都知事となった翔太郎の秘書を務める。タイトルは漆原翔太郎だが、主人公はこの秘書である雲井。堅物で真面目であり、仕事ぶりは優秀。頑固なところと仕事一徹なところの両方で、サムライ秘書と呼ばれる。

漆原翔太郎

世襲で父の後をついで国会議員になった後、都知事に立候補して当選する。典型的なおぼっちゃん然とした性格で、失言を連発する。雲井をけむに巻きながら、難事件を次々に解決していく。

鶴岡小春

議員時代の翔太郎の元秘書であり、都知事に当選してから翔太郎の秘書として転職してくる。翔太郎に惚れている。

一ノ瀬正男

根暗でオタク。議員時代の元秘書。ITスキルが使えることを訴えて、都知事となった翔太郎に秘書として雇ってくれるよう頼むも、けんもほろろに断られる。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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出馬

都知事への立候補を考えている翔太郎と雲井のところにやってきたのが、正宗総理の使いを名乗る高畑という老人。500万円を差し出し、都知事立候補を見送り将来正宗総理の後継となる勉強のために留学して欲しいと言います。

正宗総理と現職の溝ノ口知事は、犬猿の仲ながらお互いの子どもが結婚しているという仲。その2人には、秘密で会談をしているという噂が。そして、立候補すれば現職の大きなライバルとなりそうな翔太郎のところに、立候補見送りの依頼。雲井は正宗総理の真意を探るために奔走します。雲井は数々の状況証拠から、「正宗総理の意向で、溝ノ口知事を再選させるために翔太郎を抑えに来たはず」と推測。

高畑老人が翔太郎の意思を確かめに再度訪れた時に、翔太郎の天然か計算かわからない迷推理が炸裂。高畑老人は正宗総理の変装した姿。雲井の推測は完全に的外れで、溝ノ口知事は再選不出馬会見をします。変装を見ぬいた優秀な翔太郎こそ後継者にふさわしいと留学を推すも、翔太郎は都知事に立候補。支持率90%で当選を果たします。が、所信表明演説で早速70%に。

襲撃

東京都では、関東電力社長の鬼瓦の参考人承知が迫っていました。鬼瓦社長就任後、変電所の制電システムをアップデートして電力テロに備えた鉄壁のセキュリティに変えたところ、却って電力供給が不安定になり、小規模な停電が頻発していました。

そんな鬼瓦と東京都に、アイスクリーム党なるイタズラ集団から、予告状が届きます。アイスクリーム党は不届きな政治家にアイスクリームを投げつける好意を繰り返す人たち。物々しい警備で始まる参考人承知。雲井はまたも、アイスクリーム党の手口について調査して備えますが、空回りします。襲撃は、身内とも言える都議の龍造寺の手により行われますが、あっさりそれを予想して止める翔太郎。プロレスラー出身の龍造寺都議に対して、モノマネを披露するという都知事にあるまじき行為で、ニコリともしない都議を疑っていました。議場に絶対に持ち込めないと思われた口に含んだアイスクリームを見事iBoardという最近主流になっているタブレットでシャットアウト。

この件についての会見でも、キン肉マンネタを持ちだして支持率を60%に下げます。

馬鹿

東京都が推すゆるキャラが、筋肉ムキムキの体にけん玉の玉が頭になったケンダマダーというキャラクター。このキャラクターの発案者が都に務める外川。外川は蛇蝎のごとく翔太郎を嫌っています。

都政では、一ノ瀬が秘書として雇ってくれるよう頼むヒトコマと、またも東京都が停電に見舞われるというヒトコマがありました。

ケンダマダー着ぐるみの中の人が内田。停電時の東京都の監視カメラ映像を見ていた翔太郎は、内田が横断歩道で転倒して、おばちゃんに助けられるところを発見します。内田が怪我をしていることを確信した翔太郎は、外川から嫌われテイルにも関わらず、内田に替わってケンダマダーの中の人になろうとします。

ケンダマダー着ぐるみと内田がいる控え室を訪れた時に事件は起きました。ケンダマダーの顔に「馬鹿」と墨で落書きがしてあったのです。これでは当日のショーは無理です。容疑者は2人、外川と内田。内田よりも前に外川が控え室に出入りしていたこと、墨が乾ききっており内田が着替えようとした時にはすでに落書きされていたという証言がもっともらしいことから雲井は外川の犯行と推理。もちろんお約束通り、この推理は否定されます。それも翔太郎ではなく、翔太郎に誘導された小春によって。

最初から落書きされていた着ぐるみを、巧妙に隠していた内田が犯人。証拠となったのは、着ぐるみがしまわれていた箱が控え室の奥深くに隠されてしまっていたこと。その箱にも墨がついてしまったために、奥に隠さざるを得ませんでした。

最後は翔太郎が勝手に「馬鹿」と落書きされたケンダマダー着ぐるみを来て、ショーに出たことがバレて45%まで支持率を下げるというオチが付きます。

外交

東京都にアール国のコンスタンス王女が訪れることに。アール国大使館を訪れた翔太郎と雲井は歓待を受けます。特に雲井の待遇は至れり付くせりでした。アール国は一妻多夫制の国。雲井はコンスタンス王女の7番目の夫にと、王女に目を付けられていました。夜、王女の部屋に呼び出して迫られるも、誘惑を振り切り自分の宿泊部屋に逃げ帰った雲井は、部屋に鍵とチェーンをかけて寝入ります。

次の日、目を覚ますと机の上には大粒のダイヤが。そして王女はそのダイヤが盗まれたものであると雲井を糾弾します。部屋は密室。雲井の推測によると、容疑者は部屋の外からダイヤを机の上に入れることができるであろう薙刀の達人やアーチェリーの世界大会出場者となりますが、これもまたも間違い。翔太郎が王女こそが犯人であると断言します。王女のトリックは、ダイヤが最初から雲井の部屋に仕込まれていた、というもの。雲井の部屋に置かれていた奇妙な形状記憶のオブジェの口の中にダイヤが隠されていました。朝になり、日光はオブジェの口元に集中することでダイヤが机の上に落ちるという仕掛け。王女の狙いは、雲井を夫にすることはもちろんでしたが、アール国と日本の首脳会談の予定を10月ではなく9月にするための交渉カードを手に入れることでした。10月は自分の誕生日があるから、という女王様っぷり。

結局この件で、王女のパーティ出席が取りやめに。その説明の記者会見で、理由説明ではなく何故かおもむろに女性の口説き方の説明を初めて支持率を25%まで下げる翔太郎がいました。

辞職

伏線回収として、翔太郎が正宗総理の悪事を看破します。東京都で頻発する停電は、総理の関東電力社長に対する指示によるもの。翔太郎は総理と鬼瓦社長が繋がっていた証拠として一万円札の番号、タバコのDNAを提示します。「馬鹿」で停電が起きる直前に道で倒れた内田を助けたおばちゃんが総理の変装。直前までおばちゃんが吸っていたタバコの銘柄が特殊なものであったことから、そのタバコを発見して唾液をDNA鑑定に出していました。また、鬼瓦社長がクリーニング代として差し出した一万円の番号が、翔太郎に渡されようとしていた500万円のお札と番号組が一致していました。

総理の狙いは首都停電で、混乱を起こすことにより首都機能の分散を測ること。東京一極集中による弊害を強く感じていた正宗総理の強攻策でした。この説明で幕引きかと思われましたが、雲井がその説明もまた他の悪事から目を逸らすためのフェイクであると指摘。本当に総理が隠したかったのは、都の粉飾財政でした。最初に溝ノ口知事と会談していた本当の目的は、溝口によって行われた都の財政粉飾であり、これが明るみに出れば一千万人を超える都民の行政サービスに大打撃を与えることは確実でした。少しでも東京都民のダメージを少なくするために、移転を促す強攻策として電力供給不安を煽ろうとしていました。そして、最初に翔太郎に立候補を見送らせようとしたのも、翔太郎と雲井が本気で調べれば粉飾がバレる可能性があると考えたためでした。粉飾を担っていたのは、溝ノ口時代からの副知事

これらを看破したことで、下がってきていた支持率を一気に盛り返して99%にします。最後の最後に、会見で「どうせなら支持率100%が良かった」といいながら、何故か予め手配しておいた『祝・支持率100%』とラベルされたシャンパンで完敗を初めて支持率を奈落の底に落とす翔太郎。

テンポよく二転三転する推理の展開が面白い。もちろん、雲井が間違えて翔太郎が正解を出すというお約束付きです。そして、最後に支持率を落とすのもお約束。

都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ

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