ミュージアム / 巴亮介(1)-(3)、セブンを彷彿とさせるバッドエンドが襲うサイコサスペンス

ヤンマガ連載のサイコサスペンス。3巻で完結です。猟奇殺人事件を追う刑事沢村が主人公のマンガ。

「ドッグフードの刑」や「母の愛を知りましょうの刑」といった書き置きと共に、惨殺されていく被害者たち。沢村は、被害者たちの共通点を追います。そして犯人の魔の手は、自分の家族にまで及ぶ、といった展開。

映画「セブン」を意識してるのかなと思わせられます。この最終回は・・・どうなんでしょう。作者としては、もっとバッドエンドを突き詰めたかったかのようなコメントが。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

廃ビルの一室で発見された第一の被害者は女性。「ドッグフードの刑」として、生きたまま鎖につながれて獰猛な犬に食い殺されます。次に別の廃ビルで発見された小太りで引き篭もりの第二の被害者の男性は「母の愛を知りましょうの刑」で、ぴったり出生体重の3280gを体から切り落とされて殺されました。

第三の被害者は、「均等の愛の刑」として体をまっぷたつに切断された上で自宅と愛人の会社に宅配されてきます。警察は、同一犯による連続殺人と見ます。人間関係がなさそうな引き篭もりの男性が被害者でしたが、その被害者に収入があったことから共通点が浮かび上がります。全員が同じ裁判で、裁判員として出廷していました。幼女を樹脂に詰めるという凄惨な犯行で逮捕された犯人が自殺しており、その犯人の裁判で裁判員を務めていた人たちが今回の凶行のターゲットに。そして主人公の妻である遥も、その中に含まれていました。

仕事にかまけて家庭をかえり見ない沢村に愛想を尽かして出ていった妻と子ども。出ていった先の妻の友人宅に行くも、一足早く犯人の魔の手が及んでいました。妻子の行方を追う沢村ですが、捜査からは外されます。そして、独自に犯人を追います。

犯行は何故か全て雨の日、カエルのお面に雨合羽という出で立ちの犯人によって行われていました。そして、雨の日に沢村が同僚から事件に関する情報を得ていた時に、犯人自ら沢村に接触してきます。犯人を追うも、同僚を殺されてしまいます。そして、沢村は警察の前からも姿を消します。沢村は、雨の日に晴れ間が出た瞬間の犯人の様子から日光にアレルギーを持つ人物が犯人と推理。動機は自分の芸術である殺人で、他人が逮捕された上に冤罪で有罪になってしまったのが許せないというもの。そのために、幼女樹脂詰め殺人の裁判員を狙って、次なる芸術殺人を繰り広げていました。

動機から犯人を追う警察では、真犯人に至れないと考えた沢村は、独自にアレルギー専門病院を回ります。そして、犯人と思しき人物を突き止めます。金持ちの両親のもとに生まれた一人息子ですが、両親を凄惨な殺人事件でなくして心にトラウマを負ったということで、引きこもって生活していました。はっきり語られませんが、両親を殺したのもこの犯人でしょうね。

そして、犯人の家に妻子を助け出すために拳銃を構えて侵入する沢村。犯人と揉み合いになり、金槌で頭を殴られて気を失います。目を覚ますと、パスワードロック付きの部屋に閉じ込められていました。パスワードを突き止めるために、しぶしぶ部屋に置かれた大量のジグソーパズルと格闘する沢村。その様子をカメラで監視する犯人。時折排気管から差し入れられるまずいハンバーガーとコーラを食べながらパズルを解いていくと解答の「EAT」の文字が浮かび上がります。部屋を出ると、冷蔵庫の中に妻子の首が。閉じ込められた部屋で食べていたハンバーガーを思い出して絶望する沢村。

その様子を見て、自分の芸術作品に酔いしれる犯人。妻子は生きていて、首は精巧に作られた偽物でした。沢村の前に姿を表した犯人に、怒りの表情むき出しで銃を構えて追いかける沢村。廊下の角を曲がった所で、雨合羽を来て仮面をかぶった犯人が妻であることに気付きます。息子を人質に取られて、犯人の格好をさせられていました。夫に妻を殺させる、というところまでが芸術だったんですね。背格好から妻に気付いて、はずれる犯人の目論見。そこに警察が突入してきて事件は終焉を迎えます。

連載最後は主人公が、家族を失うトラウマに苛まれていることを示唆するものでした。沢村だけでなく、無実の人間を有罪にしたということで裁判員を務めた妻をマスコミが追い込むシーンが追加されています。犯人が示した3つの選択肢で、3人とも助かるエンドになったはずなのに、これは辛い。