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掟上今日子の備忘録 / 西尾維新、眠ると記憶がリセットされる忘却探偵の活躍、あらすじと感想

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掟上今日子の備忘録

「掟上今日子の備忘録」は「化物語」の西尾維新先生が描く探偵モノ。西尾先生の作品で初となる実写でのドラマ化が決まっている作品。

最速の探偵・忘却探偵といった称号を持つ探偵掟上今日子の活躍を描きます。続編として「掟上今日子の推薦文」「掟上今日子の挑戦状(8月19日発売)」があります。

簡単なキャラクター紹介

キャラ名 説明
隠館厄介(かくしだてやくすけ) 巨大な体躯を持ち、いつでもどこでも事件に巻き込まれて疑いを駆けられる主人公
掟上今日子(おきてがみきょうこ) 厄介に助けを求められるも毎回忘れている最速の探偵。前向性健忘の一種で、寝ると1日ごとに記憶がリセットされてしまう性質を持つ。そのため、あらゆる機密事項も忘却することから重宝されている。そして1日で終わる探偵仕事しかできない
紺藤(こんどう)さん 厄介が出版社でアルバイトしていた頃の上司。厄介が何かとお世話になっている

あらすじと感想(ネタバレ注意)

第一話 初めまして、今日子さん

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とある研究室にて、重要な研究のバックアップを紛失する事態が発生。悪意ある人物による研究情報の盗み出しを疑った室長が徹底的に調査を開始するも紛失したSDカードは見当たらず。最も疑わしいのは研究室で最後に働き始めた隠館厄介。みんなから疑いの目を向けられた時に彼が発した言葉「た、探偵を呼ばせてください!」

呼ばれたのは最速にして、眠ると全てを忘れる忘却探偵掟上今日子。盗まれた研究の内容が漏れても問題ない人物。そんな彼女が研究室の創作を開始します。しかし、件のSDカードは見つかりません。他のSDカードに紛れ込んでいるのかもしれないと当たりをつけて、すべてのSDカードを調べますが該当するものは発見できません。

どうしようかと厄介が思案していると「隠し場所はだいたいわかりました」と宣言する今日子さん。しかし、その直後彼女は寝てしまいます。差し出されたコーヒーに犯人が睡眠薬を混ぜていました。全てを忘れる今日子さんですが、なんと体に重要な情報?をメモ。メモしていたのは「身長190cmの厄介は信用できる」という解決に繋がりそうもないもの。しかし、厄介から状況を聴きだした今日子さんはあっという間に事件を解決。

「紛失したSDカードは熱湯が入っているポットの中」と宣言する今日子さん、そのとき犯人が本当のSDカードの在り処を気にするのを見逃しませんでした。犯人の目的はSDカードを持ち出すことなので、それが失われたのかと一瞬焦ってしまいました。SDカードはすでに調べた雑多なデータの入ったものの中に紛れていました。関係ないデータで上書きした上で、後から復元するという技がありました。こうして最速の探偵の最初の事件が幕を下ろします。

第二話 紹介します、今日子さん

紺藤さんから不思議な相談を持ちかけられた厄介。紺藤さんが担当している女性マンガ家の家の金庫から100万円が盗み出され、「100万円を返して欲しければ身代金として1億円振り込め」という要求を受けています。そのマンガ家は理由を話さず、1億円を振り込もうとします。わけが判らずどうしていいかわからなくなって厄介に相談を持ちかけられ、そこから今日子さんに依頼することに。

「はじめまして」と挨拶する今日子さん。件の女性マンガ家里井先生にインタビュー。肝心なところを話そうとしない里井先生ですが、ここでも今日子さんの冴えわたる推理で1億円の価値がある100万円の秘密を暴き出し、犯人もあたりを付けます。里井先生と話す中で、細かい記憶があやふやなことを見ぬいた今日子さんは、100万円のお札に書かれた通し番号がクラウドにあるマンガのネタ帳や資料へのパスワードになっていることを看破します。

犯人は里井先生がそうしていたことを知っていたアシスタントの一人。さらに今日子さんは里井先生が紺藤さんのことを好きということも推理。それゆえに、最初から正直に何が怒っているのかちゃんと相談出来なかったという乙女心。

第三話 お暇ですか、今日子さん

変人で巨匠でもあり多数の作品を残している作家須永昼兵衛が亡くなったことで紺藤さんから相談された厄介。須永先生はなんと、遊び心でできあがった原稿をゲームと称して隠してしまい、宝の地図を渡して担当編集者に探させるという一風変わった趣向を楽しむお方。そんな須永先生がヒントだけ残して亡くなってしまったということで、今日子さんの出番。

須永先生の大ファンだった今日子さんはこの依頼を2つ返事で引受けます。といっても、別にわざわざ悲しませることはないと須永先生が亡くなったことは伏せて、単純に宝探しだということで引き受けてもらうことに。ヒントは4つ。

  1. 作品の原稿枚数は、およそ120分あれば読めるくらい。

  2. デリケートな場所に隠してあるので、最新の注意を払って探すこと

  3. あるものではなく、ないものを探せ

  4. (鉛筆が必要になるかもしれない)

4番目だけは修正テープで消されていました。括弧内は光に透かして読み取ったヒント。厄介とのコミカルなやり取りもほどほどに、お宝を見つけ出す今日子さん。手に取ったのは1本のカセットテープ。家の中には、CDやMDもありましたが120分の録音ができる媒体はそのカセットテープのみ。そこにデジタルデータで原稿を隠していました。「ないものを探せ」の部分は、この家にはCDやMDを再生する機械はあっても、カセットテープを再生する機械はないという意味。

厄介とのやり取りの中で、自分の探している作品が須永先生の最期の作品になってしまったことにも気づいていました。須永先生のことをしゃべるときに過去形になっていることから全てを察するという明晰な頭脳を見せます。

第四話「失礼します、今日子さん」と第五話「さようなら、今日子さん」

この2つの話だけ、続いています。第三話からもつながってきているんですが、第四話で一度眠って記憶がリセットされて、第五話で解決編。

須永昼兵衛の遺稿を見付け出した後、その須永先生の死因が問題になっていました。自殺か自然死かが判然としませんでした。といっても警察以上の捜査はできないので、今日子さんは須永先生の作品を読み解いて自殺の兆候があったかどうかを探すことに。

生涯現役を謳っていた巨匠須永先生の全ての作品は膨大な数。記憶がリセットされるようになるまでに半数を読んでいた今日子さんにとっても、とても1日で読みきれる量ではありません。ということで徹夜でこの課題に挑むことに。眠らなければリセットされないんですね、映画メメントのように時間トリガーではない。

厄介は今日子さんのアシスタントとして、眠ってしまわないように見はる役。睡眠不足により、だんだんと言葉が刺々しくなる今日子さん。連続の読書で疲労が限界に達した所で今日子さんは一度シャワーを浴びに行きます。そのとき不覚にも眠ってしまう厄介、お風呂場では今日子さんも疲労に勝てず眠ってしまい、冷水シャワーを3時間浴び続けていました。すぐさま今日子さんを介抱する厄介。今日子さんの裸には、たくさんのメモが残されていました。

ここで厄介はひとつの決断を下します。このメモが残されたままだと、目覚めた今日子さんは再び疲労の限界まで頑張ってしまう。それならばいっそ依頼を忘れてもらって安静にして欲しいと。依頼をなかったことにするために、今日子さんの体をケアしつつ1日の痕跡を綺麗サッパリ消す厄介。今日子さんが絶対に入るなと言っていた寝室に入った時に今日子さんの重大な秘密を知ってしまいます。

翌日、紺藤さんに事の顛末をぼかしつつ説明して、今日子さんでも無理だったという事で話を収めようとしていると隣から「須永先生の死は自殺ではありませんよ」という声が。声の主はなんと今日子さん。実は眠ってしまった今日子さんは厄介に介抱されている途中で覚醒していました。そのときに体に残ったメモ、厄介が作業している中こっそりと抜き取った紙からすべてを推理していました。

実は須永先生の過去作を全部読もうとしていたのは、依頼にかこつけて読んでいない作品を読みたかったから。須永先生の過去作のつながりから、ノンシリーズにこっそり配された脇役の成長が描かれていたのを見逃しませんでした。その脇役の人生が終わっていないことから、続きを描く意欲があったであろうことを推理。

最期に、厄介が今日子さんの寝室で見てしまった秘密は、天井に今日子さんの筆跡ではない別の誰かによって書かれた「おまえは今日から、掟上今日子。探偵として生きていく。」という文があったということ。今日子さんもそれを書いた人物が誰なのか知りませんでした。その秘密を追うために、毎日記憶が消えてしまいますが探偵業を行なっていました。

厄介は今日子さんのことを思っているんですが、どんなことをしても忘れてしまうので報われない恋かと思いきや、ちょっと報われる展開も。介抱されている途中で目覚めた今日子さんは、自分を抱きかかえる巨人にどこか安心感を覚えていました。記憶は消えていますが、体は厄介の優しさを覚えていたということでしょうか。

読者が推理する要素はなく、今日子さんのスピーディな活躍を楽しむエンターテーメント作品。一瞬で終わる推理が気持ちいい。

掟上今日子の備忘録

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掟上今日子の備忘録 忘却探偵

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