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シンドローム / 佐藤哲也、隕石が飛来してから破滅を始める街で片思い相手が気になって仕方ない男子

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シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

ボクラノSFと銘打った福音館書店のシリーズ。

ある日、隕石が飛来した日から少しずつ壊れていく日常を、一日ごとに丹念に描きます。佐藤哲也先生の韻を踏んだリズミカルなやり取りと随所に挟まれた西村ツチカ先生の絵がすごくいい味。

キャラクター紹介

キャラ名 説明
ぼく 隕石が飛来して謎の生物の影が迫るも久保田が気になって仕方がない
久保田葉子 ぼくの後ろの席の女の子
平岩勇 ぼくと違うクラスだけど久保田が気になってたびたび話しかけてくる熱血漢
倉石豊 映画やSFに詳しいぼくと平岩の友達

町全体そして学校全体が恐怖に包まれていくんですが、ぼくが気になるのは久保田さんだけ。しかし、その気持ちがなんともまたヘンテコな表現で、自分自身に気取られないようにしているかのようでコミカル。

ぼくは久保田葉子が恐ろしいのだ、とぼくは頭の中で繰り返した。なぜ恐ろしいのか、ぼくはその理由を知っているような気がしたが、理由が置かれたその場所は精神の外周にあって暗い影に覆われていた。理由があるのは知っていたが、ぼくには理由が見えなかった。理由を見てはならない、と僕は思った。理由は暗黒の領域に隠れているのだ、と僕は思った。そこに入ってはならない、とぼくは自分に言い聞かせた。もし入れば、ぼくは非精神的な存在になり、現実と迷妄との区別を見失って、ばかげたことを始めることになるだろう。恋をするのだ、と僕は思った。

はっきりいってしまうとぼくは久保田さんとの距離が気になって仕方がないわけですね。

恋とは迷妄にほかならないのだ、とぼくは自分に言い聞かせた。ぼくは精神的な状態をたもつことで、この迷妄の圧力から守られていたが、もし久保田葉子がぼくに対して圧倒的な距離を取れば、そこに現れた圧倒的な空隙に迷妄が圧倒的な圧力でなだれ込んで、ぼくを非精神世界へ押し流すことになるだろう

あらすじと感想(ネタバレ注意)

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久保田さんだけが目に入っているように見えて、崩れていく日常を淡々と感じ取っていくぼく。1日目、授業の途中で隕石が飛来してちょっと大きな地震が。すぐさま隕石が落ちたところを見に行こうと提案する平岩。隕石が飛来した場所を一目見たところで、市役所の防災課に勤める姉に見つかって追い返されます。

その後、姉からちょっとずつ情報をもらいながら、平岩・倉石と喧々諤々の議論。やれエイリアンの乗り物だの、道の宇宙生物だの。調べればあっさりと正体がわかるんじゃないかと思われますが、大学の調査団が到着した時には、隕石が見つかりませんでした。現場に残されたプラスチックの破片。クレーターの下には巨大な地下に向かう空洞と強酸性の臭気。

少しずつ増えてくる陥没の報道。5日目に、未知の生物の手が学校の校舎にまでおよびます。学校の周囲を覆う霧が見えてそこから、何かの触手らしきものがのぞいたと思ったら、校舎ごと地面に陥没。ぼくは助けを待って久保田さんと一緒にいることに。

陳腐なB級SFみたいだ、とどこか他人事ですが脅威は確実に迫ってきて、真っ暗な空間で次々に太くて大きな触手が襲い掛かってきます。救助隊の到着で脱出するぼくたち。

淡々と逃げる準備を整えて、久保田さんともメールしてから、父の車で脱出するぼく。

ここに戻ってこれるのか、とぼくは思う。ぼくは思う。いまはもう思うことをやめようと思う。

淡々と迫る恐怖と、それでもなお片思いしている久保田さんが気になって仕方ない心情と、どこかクールに「映画みたいだ」と現実感のないフワフワした表現のミックス。読みだすと止まらない面白さはあるんですが、ハッピーエンドや納得の結末みたいなのはありませんでした。

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

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