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ナナのリテラシー / 鈴木みそ(2)(3)、ソーシャルゲーム開発のコンサルと電子書籍のコンサル

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ナナのリテラシー3 (Kindle Single)

ナナのリテラシーはお金大好き鈴木みそ先生が描くコンサルマンガ。1巻では、作者を投影したかのような立ち飲み屋で飲んだくれているマンガ家の鈴木みそ吉先生が登場して、電子書籍で新鉱脈を掘り当てるまでを描いていました。

そこで読むのが止まっていたんですが、最近鈴木みそ先生に関連した記事を見る機会があったので、気になって続きを読みました。

gallerycraft.hateblo.jp

kindou.hatenablog.com

どちらも結構バズったエントリで、一読する価値があります。

2巻と3巻のあらすじと感想(ネタバレ注意)

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2巻ゲーム編

2巻はゲーム編。依頼者は黒川内大五郎という往年の名ゲームクリエイター。時代の波に乗り遅れたゲーム会社BOMBが舞台。依頼内容は、「天才を殺すにはどうすればいいか」というもの。BOMBを支えているのはたった一人の天才。パズドラの話題が出てくるように、ゲームもマンガと同じように一発当てるととてつもなくでかい鉱脈が眠っています。大規模な開発資金を使った洋ゲーのようなクオリティを中小ゲーム会社が出せるはずもなく、課金・ガチャ・携帯・スマホゲーといったキーワードが出てくることになります。

事実上ソーシャルゲーム開発以外の選択肢がないわけですが、黒川内にとってすればソーシャルゲームなんてゲームじゃなくて麻薬みたいなもの。天才綾小路の主張はわかりやすく「ゲームはバカと暇人のためのもの、情弱の暇つぶし」。課金を煽るチープなスマホゲーを大量生産することにためらいはありません。そして、そこで稼いだお金で会社が持っているのも事実。

ナナが分析して導きだした結果は、徹底的に個性を出すこと。綾小路の作るゲームアプリは確かに初動こそそこそこの課金を叩き出しますが、すぐにあきられて終了してしまいます。だからこそ次々に数を出さざるを得ません。黒川内が指揮するゲームは、じわじわとその良さが受け入れられはしますが、あまりにも収益がショボすぎてビジネスとしてやっていけません。出来上がったゲームアプリは、「ラーメンコレクション」。実在の有名ラーメン店を萌えキャラに擬人化して、食べ歩きとキャラゲットを連動させたという超個性的なゲーム。こういう方向性にしか解はないということでしょうか。

仁五郎の評価はなんとも言えないものでしたが、ナナのコンサルによりBOMBは新たな海原へ家事を取り始めたというところで終わりに。殿下と呼ばれて孤高を極めているかに見えた綾小路は、実は大五郎の娘の光と交際していたんですね。そのことにうすうす気づいての「天才を殺すには」という依頼。娘を守りたいという本能もあったんですかね。

3巻マンガ編

マンガ、ゲームと来て最終3巻はまたマンガにフォーカス。作者を模したと思しき鈴木みそ吉先生が再び登場。

まだ電子書籍にマンガがそれほど出てきていない黎明期に進出したことで、それなりの先行者利益を手にすることが出来ましたが、この利益がいつまでも続かないことは自明。大手出版社が本腰を入れて電子書籍に踏み込んでくれば、一覧に出てこないほど小さく消し飛ばされてしまいます。名前の出てこない電子書籍は検索すらされないサーバの肥やしになってしまいます。

次の一手の指南を乞いに訪れたみそ吉先生へのアドバイスは、ほかの漫画家を巻き込んで出版社から独立して電子書籍を出すのをアドバイスすることで上前を撥ねるポジションをとれ、というもの。このアドバイスは出版社を敵に回すので大ばくち。

その後、編集者とのやり取りで仁五郎がモデルになってる電子書籍を勧めるコンサルを主役にしたマンガを描くための打ち合わせシーンが出てくるのがメタになってて面白い。

みそ吉先生の依頼の次は、才能に恵まれヒット作を量産してきた葵ヨーコ先生が登場。電子書籍がテーマなんですがテーマはエロに。ヨーコ先生は自身の作品がドラマ化・映画化といったメディアミックスがなされるほどなんで、ちまちま契約を見て電子書籍なんてことをせずに王道でヒット作を作ればいいという仁五郎のアドバイス。

しかし、そのヨーコ先生の最新作は児ポに引っかかります。問題となったのは兄妹が禁断の恋愛をするというシーン。BLが堂々と出てきてるんだからこれもいいだろう、というヨーコ先生の意見なんですが、条例により不健全図書として指定されたのは見せしめだろうというナナの考察。そして、物語を「実は兄妹じゃなかった」という方向に軌道修正できないか探ります。

ヨーコ先生の自宅から帰る途中の仁五郎とナナのやり取りで、ナナにも見えていなかったヨーコ先生の企みがわかります。ヒット作こそ生み出しましたが、その後のいくつかの作品がポシャっていて、ここからヒットを生み出せないのではないかという危機感。それが、モラルに訴えかけるギリギリの近親相姦のようなネタに走らせたのだろうと。

表現の自由で押し切りたいマンガ家側と、不健全な図書を規制したい都側という対立構図ですが、最終的にナナがたどり着いた結論はこれもまた日本が持つ根深い病理の一つに分類される、というもの。スピード違反のネズミ捕りのように、明らかにゆるゆるで守られないようなルールを作っていつでもどこでも取り締まれるようにするという、厳しいルールと曖昧な運用がセットになった権力側に都合のいい国。ルールを厳格に守るドイツを代表とした欧州と、ルールを柔軟に変えていけばいいとするアメリカ的な思想が悪い形でまじりあってできている国。なんか話が大きい方向へ。

徹底抗戦から講和の方向へと進んでいきます。大ベテラン漫画家も動員しての国会議員への陳情。悪い表現を取り締まろうとすると、委縮してよい表現も出なくなってしまうと訴えます。ヨーコ先生のマンガもちゃんと方々に筋を通して無事アニメ化までこぎつけます。

と、ここまで来たところでナナがベンチャーを立ち上げることを宣言して「ナナのリテラシー」の物語は終わりになりました。あとがきによると打ち切り。別の媒体で続編を、という話もあったそうなんですが仁五郎なら「古い作品にこだわるよりも新しい作品を」と言うだろうということで、新作を模索していくようです。

人間の欲望は限りなくあらゆる手を思いついてお金を稼ごうとするので、鈴木みそ先生のお金ネタは尽きることがないはず。次回作も必ず読みます。

ナナのリテラシー2 (Kindle Single)

ナナのリテラシー2 (Kindle Single)

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