十和田シン先生による東京喰種の小説版。この[日々]は最初に出た作品で、小説版としては続いて[空白][昔日]があります。
最初に読んだのはかなり昔になりますが、読み返してあらすじと感想を残しておきます。本編にまったく出てこない一般喰種の描写があって面白い本作ですが、重要なポイントとして
ヒデがカネキのことを喰種と疑い始め、同じ様にカネキを喰種ではないかと不審に思う人たちからかばって疑いを払しょくするシーンがある
ホリチエと月山との出会い、友人関係を築いていくシーンがある
ことが挙げられます。特にホリチエと月山は現在本編の:reでガンガン登場してきているところ。戦闘メインとなってしまった東京喰種において、まったく闘争心がなくて臆病で赫子も出せない人物が主人公の章もあったりしてマンガでは受けないでしょうけど、小説として読むと細やかな描写が面白い。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
聖書
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ヒデが主人公で、カネキと話すシーンから始まります。小学校時代からの同級生で、同じ大学に通うカネキに転機が訪れたのはリゼという女性と出会ってから。
「あんていく」という喫茶店で出会った2人がデートに行き、事故にあいリゼが亡くなり重傷を負ったカネキは一命をとりとめましたがどこか変わってしまったような。快気祝いにレストランに連れて行ったときに大好物だったはずのハンバーグを吐き出すカネキ。
大学にいるときにヒデに接触してくる木山という男と、三晃という女。「金木くんって喰種っぽくないですか?」と語る2人はオカルト研究会に所属。大学で食事をとった形跡のない人物をリストアップして喰種かどうかを確かめるという活動に勤しんでいました。小学校時代から付き合いのあるカネキが喰種のはずはないということで、疑いを晴らすためにオカ研に参加するヒデ。
オカ研のオフ会でカインというカリスマオカルト研究家と出会い、一緒に活動している途中でそのカインが喰種の正体を現しヒデが機転を利かせて撃退する、という部分が本編。とっさにおにぎりを相手の口に押し込んで*1、CCGが見回りしていたルートに誘導します。
最後、カネキのかばんに食べかけ大量のお菓子を仕込んで、疑いをそらすシーンがありましたけど、このシーンでのヒデの心情はどんなもんなんでしょう。
弁当
トーカが主人公。学校で最も仲がいい人間の小坂依子と過ごす日々が描かれます。
学校でいろいろあってすれ違いを経つつも、2人で動物園に行くことに。お弁当を作って持っていくことになりますが、まったく料理経験のないトーカはカネキを頼ります。味見こそできないまでも、レシピを見ながらお弁当づくりを教えるカネキ。メインの唐揚げまで作りこみます。
2人でお弁当を持っていく動物園。ほっこりする人間と喰種の交流ですね。
写真
月山習が主人公で、カネキがリゼと出会う数年前、堀チエという女性カメラマンとの出会いが描かれます。
ある夜、人気のない公園で、仕事終わりのマラソンを趣味にしている男が月山の犠牲になろうとしていました。月山はこのとき16歳の高校生。自分の美食に酔いしれて男の美しい形状のふくらはぎを頂こうと「僕をより輝かせる糧となりたまえ!」なんて言っていた時に瞬くフラッシュ。
「いよっしゃ、撮れたあああ!」と叫びながら逃げ出したのは一眼レフのカメラを持つ小学校高学年程度であろう少女。勝手知ったる路地を逃げていく少女を、怒りに打ち震えながら追い詰めていく月山。追いついたところで恐怖しているのかと思いきや、月山が食事しようとしているところが写った自慢の一枚を見せつけてきて「月山習君だよね」といいながら見せつけてくる学生証。同じ学校に通う女子生徒で「堀ちえ」という名前が。そして堂々と笑いながら「走って疲れたから甘いものが食べたいな!」と宣います。
堀チエの態度と命を懸けてまで写真を撮ろうとする熱意に興味を持つ月山。学校で堀チエのことを周りに聞くと「写真マニアの変わり者」「奇想天外の変人」といった評判。
堀チエに弱みを握られているのかと察した女子生徒の松前が「わたくしが消してきましょうか、習さま」なんて言って来たり。松前は人間オークション編でも出てきましたね。叶とともに撃退されてましたが。
「君と一緒に行きたい場所があるんだ」と堀チエに誘いをかける月山。「なんか面白そう」ということで、その誘いに乗ると呼び出された場所は深夜の病院でした。それも痴ほうの気がある老人の部屋。
その部屋に潜んでいると、とあるナースが徘徊に来ます。老人に虐待を加えるナース。とそこに響き渡る月山の「素敵な白衣の天使だろう?」という月山の声。虐待しているところを見られ、目の前には喰種ということで震えあがります。月山の目当てはこのナース、ではなくて94歳にもなる老人の皮膚でした。一口サイズをペロリとはがしてその味を堪能します。喰種内の美食家たちの間で楽しまれている年寄のカサカサの皮膚という珍味。
後日談として、そのナースが老人に襲い掛かっていた喰種をナイフで撃退した、というエピソードに代わってしまっていたことが語られます。月山はちょっと皮膚をはいだだけで殺したのはそのナースですが。そんなナースの残酷な本当の顔を写真に収めて悦に入る堀チエ。2人はなかなかいいコンビでやっていけそうですね。
上京
桃池育馬、喰種、20歳、ミュージシャンを目指して上京します。上京して最初にやらないといけないのは食料の確保。母が持たせてくれた「弁当」はありますが、いずれなくなるのは必至なので自分で食料を調達しなければいけません。喰種は怖いから近寄らないようにするというビビりっぷり。
人間を襲うなんて頭の隅っこにもなく、一生懸命死体を探すイクマ。家の近くにある高台が自殺スポットであることに気付き、食料の安定供給?に成功します。そんなイクマに「最近、ここらを荒らしているのはお前か」といい接触してくるめっちゃ強そうな喰種。長髪にあごひげ、四方ですね。イクマの事情を聞き、カネキと話が合うかもということで「あんていく」に行くよう勧めます。
いろいろあって「あんていく」に行ったイクマがカネキに話した事情はなかなか複雑。イクマの母親は人間でした。といっても育ての親で血はつながっていません。母は医者でした。不妊治療で授かった1歳の子をなくして家を飛び出した時に出会った瀕死の喰種母子。CCGに追われる母子は赤ん坊を預けて預けて囮となって死にます。その様子に心を打たれたことで喰種の子を人間として育てようと思い立ったんですね。人間も喰種も関係なく感動させる人間になりたいとミュージシャンを目指すイクマ。
ひょっとしたらそのうち本編でイクマがテレビに出演してるシーンなんてのもあるかも。
枝折
外に出ることのなかったヒナミをカネキが図書館に連れ出し、一人の人間の男の子と交流していくというほっこりエピソード。
図書館には、「聖書」のエピソードで登場した三晃が現れます。オカ研で喰種を探しながら、彼女自身も喰種。ヒデをよく観察していて、カネキに対して「永近君は聡い子ね」という意味深な言葉をかけます。
吉田
フィットネスクラブに勤務する喰種の吉田カズオ。人間の女性にコロッと騙されて50万円を持ってかれちゃいます。この吉田カズオという喰種、本編の1巻に出てきてニシキにとばっちりで殺されちゃう哀れな喰種、という設定がちゃんとあるみたい。
重点的にあらすじを書いたのはヒデの「聖書」と月山の「写真」。他の話はこれから本編に絡んでくることはなさそうなんですが、ひょっとしたらイクマあたりは出てくるかも。
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*1:喰種は普通の食事を口に入れると殺しどころじゃないぐらいの不快感に襲われる、らしい