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Y教授の復帰について私が考えること

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研究費の不正使用で大学を解雇されたY教授が復帰され、上海でラボを構えて研究者を募集しています。

Institute of Biology and Information Science

不正は許されることではありませんが、Y教授の研究者としての実績と能力は疑いの余地なく素晴らしいものであり、彼が再び研究に携われるのは良いことと言えるでしょう。

不正の内容は、使い古された飽き飽きした手法である研究費のプールでした。今どきこんなことをいる研究者がいるのか?と思わずにはいられない拙いやり口でした。バイオ系の研究は、装置が高額になりがちで、例えば3年の研究で研究費を獲得した場合、初年度に大きく研究費を使うことになります。単年であれば、どうにかして共同研究の形で装置を借りようとするのが常道。このやり方を指導したと思しきU教授は、発覚当時すでに定年退職していて、名誉教授の称号を取り消すだけという意味不明な軽い処分でした。

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人口が減り、経済が弱まると共に、日本の国全体の研究費は下がる一方です。バイオ系に限らないかも知れませんが、予算獲得は実績のある研究者に集中しがちです。結果として、

  • 定年退職済みのU教授は、不正で美味しい思いをしつつ、事実上何もないに等しい軽い処分となりました。

  • Y教授は、解雇という重い処分。Y教授のもとで研究したいと思ってやってきていた修士・博士・ポスドクたちを思うと泣けてきます。そのY教授も、能力を買われて、日本にいた時以上の待遇で上海でラボを構えることになりました。

日本国内で大きな予算を獲得する能力のある研究者は、実は海外、特にアジアで様々な事情により現在以上の高待遇で研究できるという事情があります。

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私は企業に所属している研究者で、なかなかバイオ系から足を洗うことはできませんが、日本のこの業界は先行きがどうしようもないということは断言できます。

  • 大きな予算を獲得した、あるいはできる研究者は不正をしても、より高待遇で海外に研究の場を獲得できます。

  • 国全体の研究費というパイが減るので、広く研究費を支給することはできません。結果として、アカポスだけ持っている大半のお金のない研究者は、ますますその立場にしがみつき、大した成果も出ずにインパクトファクターを稼ぐためだけにせっせとPLOS ONEに論文投稿を繰り返すことになります。

上記のような状況で、テニュアを取った研究者ほど、学会でポスドク募集を声高に叫び、優秀なポスドクが来ないと嘆いています。ポスドクの待遇を知っているはずですよね?と言わざるを得ません。私の同級生が、テニュアを取ったあと、自分はポスドクの厳しい待遇で頑張ったのにポスドクとしてくる奴がいない・根性がいない、という旨の発言を飲み会でポロッと出したときは暗澹たる気持ちになりました。100歩譲って彼の正しいことが正しいとしても、国全体がシュリンクしていく現状に照らし合わせると、ポスドクに立候補する選択は合理的になりえません。

優秀な研究者が流出するという問題と、その優秀な研究者すら生まれる余地が無くなっているというのがこの国に現在起こっていることではないでしょうか。最後にポジショントークをしておくと、私の所属する企業や、競合企業は強く博士課程後期修了者を求めています。マスターじゃありません。日本の公的機関での研究にはさっさと見切りを付けて、企業も選択肢に入れてはどうでしょうか。どっちに進んだところで、自分の隙なことを研究して食べて行く、なんてのはひとにぎりの人にしか許されない夢物語ですからね。

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