BW(ビューティフルワールド) 麻雀星取伝説 / 志名坂高次(1)(2)(3)、チート能力全開で戦うSF麻雀

「凍牌」の志名坂高次先生の麻雀マンガ。うわさに過ぎない話として、

星を100個集めたらなんでも願いがかなう
星は1日1つしかやりとりできない
星は売買譲渡できない
誰かが願いをかなえると、すべての星がリセット

などというルールが、本当か嘘かわかりませんがささやかれている世界が舞台。

内容は麻雀マンガの枠にとどまらず、とんでもなくぶっ飛んでいき、学校内の麻雀部で戦っていたと思ったら、宇宙→電脳空間→最後は地球の海？へと飛躍していきます。言葉だけで語られる設定に、ついていくだけでせいいっぱいでした。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

主人公の新条匠は、時給1万円に釣られてルールもわからないまま麻雀の卓に座っていました。自分を雇ったおっさんは、初心者を入れることで2対2で、コンビ打ち禁止、点数の高い方が勝利という条件をうまく使って勝とうとしていました。しかし、相手のコンビはおろか「星取り戦」の立会人の男までもがグルでおっさんをハメようとします。

その勝負を終わらせたのは、唐突に地和を引き当てた新条でした。新条のツモ上がりで、おっさんに負けた男は金属バットでおっさんを殴り殺そうとします。そこに現れたのが、日本刀を手にした霧生茜という女。凄まじい刀さばきであっという間に、立会人と立会人を買収していた男二人を切り殺します。新条の豪運に目を付けた茜は、「星取り戦」に新条を巻き込みます。

星を持っていると噂の麻雀部に乗り込む茜。星を持っていない人間が星取り戦に挑むと、負けた時に星の代わりに命を失います。その麻雀部員との対戦で、鳴いているのにリーチ、役無しチョンボといった初心者丸出しのミスをしますが、ピンズの清一っぽいのになぜか8sの単騎待ちで相手の意表をついて刺し、勝利します。

麻雀部の雑魚を倒すと、部長と副部長が出てきて星取り戦。この星取り戦から超展開へと突入します。新条と一緒にコンビ戦で挑んだ親友の長井が裏切って部長と副部長側について打ちますが、逆に切り捨てられて点数を取られ、立会人に処刑されたます。開いた卓に付いたのは、76個もの星を持つ神楽貴美の部下である牧野マキ。

この麻雀の中で、リーチすると必ず一発ツモするという特殊能力に目覚める新条。これだけでも異常ですが、窮地に追い込まれた副部長の口がパックリ開いたかと思うと、憑依者ガロンという敵キャラが登場します。ガロンは、ツモッた牌を置いたときの音で何かを見極めることができるという特殊能力の持ち主。異形の超能力麻雀バトルになります。ガロンに勝利する新条。

茜に「この世界の答え」を教えると言われて案内された先で麻雀をすることになるのが、巌水和尚という男。不正を働いて和尚に処刑されようとしていた立会人イチコ、新条、和尚、貴美の4人で卓につきます。和尚の特殊能力は念じるだけで相手を妊娠させるというもの。イチコが妊娠させられ、男ですが新条も妊娠させられます。つわりに苦しみつつも、持ち前のリーチ一発ツモ能力で勝利する新条。

和尚からこの世界の秘密が語られます。ここまでも超展開ですが、和尚の語る真実はもはや異次元すぎるので箇条書きで、

和尚は300歳、茜は68歳
この世界は宇宙船シリウスの中の電脳世界
地球の人類は、変異型エボラウイルスで絶滅していた
水と食料が尽きようとする宇宙船の中で、船員は肉体を捨てて250年前に電脳空間で生きることを決定
その電脳世界のシステムに生じたバグが、蠅の王という存在
蠅の王がその気になれば、世界を消し去れる。その蠅の王さえも従わなければならないのが、システムの大前提である最初に述べた星100個のルール
主人公は電脳世界で生まれた人格で、リーチ一発能力はバグ

ということでした、わけがわからないビューティフルワールド。200年無敗の蠅の王に挑むことになる新条。

新条、貴美、蠅の王、白金(蠅の王の部下)の4人で卓につきます。最初の見せ場は白金から。隠しカメラですべての牌をモニターで監視し、白金に伝えるというこれ以上ないくらい堂々としたイカサマを仕掛けてきます。卓外にいる茜が、逆にモニタールームを制圧して、牌を新条に伝えます。

白金が無力化されて、ここまで静かだった蠅の王が本気を出し始めます。「稲妻リーチ」と謎の技名を叫んで、6wのカンチャン待ちでリーチ。監視カメラからは、6wが4枚見えていてすでに山には残されていませんが、蠅の王は1発でツモ上がります。山に存在する牌すら捻じ曲げて変えるという特殊能力の持ち主でした。

蠅の王が「牌交換」と口にするだけで配牌が姿を変え、ツモ上がった後は裏ドラすらも都合のいいものに変わるという反則能力。絶体絶命の窮地に陥った新条はさらなる特殊能力、すべての特殊能力を無効にする力を発動します。最終盤に来て、まさかの普通の麻雀がスタート。自分との点差を冷静に見切った蠅の王を、2翻・102符の7100点ロンできわどく差して勝負を制した新条。

蠅の王から宇宙船のコントロールを取り戻したシリウスは地球に帰還します。人類は死滅したかの思われていましたが、宇宙船と同じように電脳世界に意識を移した後、クジラの脳に意識を転送して、クジラとしてみんな生きていました。電脳世界で生まれた存在である新条と茜がクジラになって仲良く泳ぐ光景で終幕となります。

このあらすじを思いついて、麻雀マンガに落とし込む志名坂先生、すごすぎる。3巻なのに怒涛の展開が濃密すぎるくらいですね。凍牌が似たような展開の繰り返しになってきたので、いろいろネタが溜まってきたのを一気に発散したかのような。麻雀マンガの枠にとどまらない面白さのマンガでした。