会社の飲み会で年金に関する議論をしました。そのときに感じたのは、年金って表面的な部分ではみんなに大きな勘違いをされているんじゃないか、ということです。気になったのは二点、
世代間格差
賦課方式、積立方式
に関して。ちょっと前に厚生労働省のマンガが話題になりましたね。内容がひどいという事でネット上では大きな批判にさらされました。いわく「今の若い世代が豊かに暮していけることを考えると、受け取る年金に差があったとしてもそれだけで若者は損とは言えない」「悲観することない、結婚してたくさん子供を産めばいい」。説明する人とされる人が全員女性だったことが私は少し気になりました(年金の未来は女性次第だとでも言うつもりでしょうか)が、内容的にはまったくおかしい部分はなく批判は誤解から来るものとしか思えませんでした。
批判が出るのは不公平感、制度への不信感があるからでしょうね。受け取る年代によって、掛け金に対して返ってくる金額が違う世代間格差が容認できない。→現在の賦課方式はおかしい。→積立方式にすべきだ。という風に考えている人が多そうです。
そもそも大きな思い違いを生みかねないと私が思うのは、納めた年金が何らかの形で自分たちに還元されるはずだ、という幻想が一般に共有されていることです。なるほど確かに現在は国民年金を25年間納めることで受給資格が得られるようになっています。しかし実際には、納めた年金は自分がもらうときには一円も残っていません。これは納めた年金が直ちにそのときの受給者に行き渡るからです。同様にあなたが受け取る年金は、すべてあなたの子や孫が納めたお金です。
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自分と同じ世代全体が受け取る年金額を大きくするためには、大勢の納税する次世代を育成することが必要となるわけです。そのため、世代間格差があるかどうかは、未来にならなければわかりません。その点で「悲観することない、結婚してたくさん子供を産めばいい」というセリフは的外れでも無責任でもなく、的確に処方箋を表しています。
積立方式はどうなのかという議論もあるかと思いますが、老後に必要な資金を積み立てるのであればわざわざ国に用意してもらって大きな中間コストを払う必要がないのは自明。貯金でいいでしょ。年金は長生きしてしまった場合の保険として、賦課方式で次世代の納税者からお金を送ってもらうことで社会全体のQOLを上げるという性質のものです。インフレやデフレがあろうと、その時に必要な分だけを仕送りしてもらうことができます。
格差に目を向けなければいけないのはむしろ世代間ではなく世代内。身も蓋もない言い方をすれば、同世代で子供をもうけた人とそうでない人が同じ年金額であることが不公平なのです。もちろん各々で、結婚できない・子供を作れない事情はあるので、直ちに受け取る年金額に反映させるようなことはできませんが。しかし、子供を作らなかった世代は報いを受けなければなりません。
一点考慮しなければならないのは、今の高齢者世代が多くの年金を受け取ることによって働く世代が必要以上に生活を苦しくする必要に迫られて、結果として子供を育てられない、といったことにならないようにすることです。ここに書いたようなことをわかりやすくオブラートに包んで伝えているのが、厚生労働省のマンガです。斜に構えず一読する価値はあります。
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京都大学の橘木俊詔教授による現代の社会保障に対する解説と改良案。全額税方式による社会保険制度一元化が最も無駄なく全ての人に納得感のある解決策に思えます。これを邪魔するのは既得権益がある人たち。厚生労働省も仕事が減る→省益が減るので大いに抵抗するでしょうね。厚生労働省の主張は間違ってはいませんが、彼らが良い解決策を示すことは期待できません。
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