生殖の非対称性から、男女の本能とそれに付随する行動を紐解く一冊。感情論ではなく、根拠付きでズバズバと厳しい現実(笑)が書かれていて面白いです。
一点だけ引っかかるというか、あまりいい書き方じゃないなと思う部分がありました。旧石器時代のくだりです。氏の主張はどれほど科学や文明が発達しても、私達の脳は旧石器時代のままだ、というものです。
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過酷な旧石器時代を生き延びるために、どのようにパートナー選考がなされたのか、という話が続いていきます。誤りとまでは言いませんが、生殖の最適戦略についてはちょっと眉唾です。旧石器時代は長いのでひとくくりにできませんが、概ねどの研究でも生殖できる年齢まで到達して狩りの戦力として数年間生きられる男は10人~20人に1人だったことが示されています。
この時代の男女には、ほとんど選択肢なんてなくて、多くて100人から140人くらいの集落で過ごしながら、その時点で最も元気な病気に強そうな人と生殖していくしかなかったんですよね。男はとにかくハーレムを作ろうとかじゃなくて、健康なうちに頑張るしかない危機感に駆られていたでしょう。
今の男女の行動を説明するのに都合のいいように論理展開がなされていますが、旧石器時代と変わらないというよりも、豊かになってみんな成人まで生きられるようになったから初めて見えてきたと言えるものです。
- 作者:橘 玲
- 発売日: 2020/06/19
- メディア: Kindle版
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