アニメ化もされた「古典部」シリーズの一冊。
文化系部活動が活発な神山高校で、主人公の折木奉太郎を中心とした男女4人が「古典部」として学校生活の中で生まれる謎を解いていきます。ちなみに古典部は、奉太郎と千反田えるが入部するまで部員0人で廃部寸前でした。そして奉太郎が入部したのは、姉の脅迫を受けたため。部活として何か古典に取り組んでいるのか、というとそんなことはなく、文化祭で文集を出すくらいしか目立った活動はありません。
奉太郎が1年生から2年生に進級するまでは、千反田える叔父の退学の謎を折ったり、ビデオ映画の試写会に出たり、温泉宿に合宿に行ったり、文化祭で文集を売ったり、納屋に閉じ込められたり、雛に傘を差したりといった感じでしょうか。推理と行っても事件が起こるわけじゃないですね。
10年以上前に「氷菓」から始まったこのシリーズは、作者によると奉太郎が卒業するまで続けられるとのこと。「ふたりの距離の概算」は5作目で、今年あたりに6作目の新刊が出るんじゃないかなーと思っています。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
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神山高校で20kmを走る「星ヶ谷杯」という名のマラソン大会で、奉太郎が新1年生の新入部員・大日向友子が古典部への入部を辞退した理由を推理します。各章で大日向と関わってきた出来事を思い出しながら、大日向の心境を推し量ります。
新入生勧誘週間で奉太郎とえるの仲良さげなやり取りを見て、仮入部することになった大日向。徐々に古典部に馴染んでいき、里志・摩耶花・えるの3人と一緒に奉太郎の誕生会を開くために家に遊びに来たり、大日向の従兄弟が開店を控える喫茶店のモニターとして部員全員で訪れたり。
マラソン大会で、これらを回想しながら、里志・摩耶花・えるに聞き取り、推理の結果大日向の誤解の中身を読み解いた奉太郎は、えるとの行き違いの原因と大日向の抱える悩みを看破します。
大日向が入部を辞退した理由を、えるは携帯を不用意に触ってしまったためと思っていましたが、真実は大日向が「えるが大日向の友達の『悪事』まで見通しているのではないか」と疑心暗鬼に陥ってしまったことでした。誕生会や喫茶店で、ちょっとしたやり取りのあやから、えるが千反田家との繋がりから鏑矢中学出身のクラスメイトまで知っていて膨大な人脈を持っているのではないかと疑い、大日向の友達のことを切り捨てたほうがいいとも取れるような発言が決定的に大日向の心を決めてしまっていました。
20Kmのマラソンという空間化された限定時間の舞台を最大限に生かした緻密な構成。米澤先生の技工が光りますね。
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