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探偵少女アリサの事件簿 / 東川篤哉、あらすじと感想(ネタバレ注意)

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探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて

森ゆきなつ先生によって漫画家もされている東川先生のライトな推理小説。サブタイトルは「溝ノ口より愛をこめて」。

キャラクター紹介

キャラ名 説明
橘良太 31歳独身、24個を2千個と誤発注したことで仕事をクビに。どんな仕事も請け負う便利屋になありアリスの子守りの仕事が舞い込む。
綾羅木有紗(あやらぎアリサ) 10歳の小学4年生、不思議の国のアリスを思わせる格好をしている女の子。世界的名探偵を母に持つ。

舞台となっているのは、神奈川県のJR南武線沿線。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

名探偵、溝ノ口に現る

時給1万円につられて依頼を受け、溝ノ口にやってきた橘。依頼人の篠宮龍也の家は豪邸で龍也の父親である栄作は高名な画家で、橘が篠宮家を訪れた時も地下のアトリエで作業中でした。龍也から応接間にかけられた2枚の絵を見せられた後で、龍也のアトリエへ。龍也もまた画家で、依頼内容はヌードモデルになって欲しいというもの。

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3時間後、家に家政婦の叫び声が響き渡ります。地下のアトリエで栄作が殺されていました。凶器は橘が応接間で見せられた絵で、額縁で頭を殴られていました。

1週間後、またも溝ノ口での依頼を受ける橘。訪れた家もまた豪邸で、主人の綾羅木孝三郎から3日間娘のお守りを依頼されます。孝三郎は探偵の仕事で出張が入っていました。橘と2人きりになると、すぐさま人殺しと罵ってくるアリサ。篠宮家の殺人事件報道を見て、橘が犯人だろうと推理していました。

その推理を否定して、3時間ヌードモデルをしていたので橘と龍也にはアリバイがあることを説明します。納得しないアリサを連れて篠宮家へ。そこで龍也とアリサのやり取りがあり、龍也がほんのわずかな時間だけ応接室に行くために席をはずしていたことがわかります。

家を探索して龍也が犯人であると推理するアリサ。その推理は当たっており、龍也は橘が来る直前に父親を殺し、立体的に凶器に見える絵をトリックアートであらかじめ作り上げておき、応接間に飾り、これ見よがしに見せた後で一瞬席を外した時に折りたたんでポケットに入れていました。

名探偵、南武線に迷う

再び綾羅木孝三郎からの依頼。今度はお守りではなく見守り。孝三郎の知り合いに荷物を届けるおつかいをアリサに頼んだので、ついて言って見守ってほしいとのこと。

その依頼を受けて、溝ノ口駅から分倍河原駅まで電車で移動し、喫茶店に入るまでのアリサを尾行する橘。アリサは無事、中崎浩介という男に荷物を届けます。

これで依頼は終わったかに見えましたが、塚本潤子という女性が殺され、警察が橘のもとに話を聞きに来ます。溝ノ口にある公園で頭を殴打されて死んでいるところを発見されました。その容疑者が中崎。しかし、中崎にはアリサと橘がアリバイの証人になっていました。

塚本は3時に同居人に「溝ノ口にいる」と電話をかけており、アリサと橘が分倍河原にある喫茶店で中崎と会ったのは3時30分。どんな手段を使っても3時に溝ノ口で被害者を襲ってから分倍河原にある喫茶店まで30分で移動するのは不可能でした。

アリサは、塚本の同居人と話し、中崎のアリバイトリックを見破ります。その夜、塚本の同居人を殺しに現れた中崎を捕らえるアリサと橘。塚本の同居人は電話で塚本の言ったことを聞き違えていました。自分のいる溝ノ口に近い発音の「矢野口」を聞き違え。実際に塚本が殴られたのは矢野口で、そのままフラフラの状態で溝ノ口まで電車で来て公園で亡くなったという3段くらいありえない超常現象が重なったオチ

名探偵、お屋敷で張り込む

浮気調査の依頼を受けて須崎建夫を見張ることになった橘、依頼人は妻の瑛子。瑛子が泊まりで遊びに行くという名目で家を出た日に、浮気するかどうか見張っていてほしいと言われます。瑛子の母、光代も瑛子の浮気調査に協力してくれます。

その日の夜、瑛子は橘の家兼事務所に待機し、橘とアリサは光代の仲のいい知り合いという名目で須崎家に招かれます。全員が寝静まった後で、瑛子から教えられていた物置から、普段建夫と瑛子が眠っている離れを見張ります。

午後11時ごろに建夫は家政婦の奥野智美と離れに入っていき、奥野だけが戻っていきます。寝ていたはずのアリサも見張りに合流。その後、ポロシャツを着た建夫がテレビを見ている様子で、動きがないと思ったら午前1時ごろに黒いドレスを着た女が離れに入っていきます。女が出ていったのは午前3時。翌日の朝、銃で撃たれて殺された建夫の死体が発見されます。

死んでいたのは建夫だけではなく、妻の瑛子も橘の家からそう遠くない倉庫で建夫を殺したのと同一の銃で撃たれて殺されていたことがわかります。橘の家の前では黒いドレスを着た女が12時半ごろに目撃されていました。この連続殺人事件の調査を始めてすぐに、あやしく笑う家政婦の奥野智美。しかし、彼女には瑛子が殺された時間や黒いドレスを着た女が目撃された時間に電話をしていたというアリバイがありました。

ここでも冴えわたるアリサの推理。瑛子を殺した犯人は被害者の建夫。奥野智美がその犯行の協力者でした。午後11時頃に2人が離れに入った後、すぐに服を交換し、奥野のメイド服で離れを出てきます。シルエットから橘は奥野と勘違い。浮気調査は全部建夫に筒抜けで、それを利用してアリバイトリックを企てていました。部屋にいたポロシャツの男のシルエットが奥野智美で友人に電話をかけていました。メイド服から黒い服に着替えて、わざとらしく目撃された上で瑛子を倉庫に呼び出して射殺。午前1時に離れに入っていき、3時に奥野が黒いドレスを着て出ていくというのが一連の流れ。建夫は自殺で、最後に銃を奥野が回収すれば完了です。婿としてイビられまくっていた建夫の頼みを受けて奥野は協力していました。これがどんな罪になるのかはわかりませんが。

名探偵、球場で足跡を探す

草野球チームの助っ人を依頼された橘。山下昭二監督に依頼されて、溝ノ口ホルモンズの助っ人としてまったく役に立たない働きを見せます。後日、人数合わせとしてホルモンズと対戦した新城ホッピーズの助っ人を依頼されます。試合当日の朝、30分前の朝5時半ごろにグラウンドに向かう所でホッピーズの投手岩代剛史と出会い、一緒にグラウンドに向かうことに。グラウンドに着くと、ホッピーズの監督である剣崎英雄が胸にボウガンの矢を刺されてマウンド上で死んでいるのを発見します。マウンド周辺はトンボできっちり整備されていて足あとは剣崎が三塁からマウンドに向かう一人分のみ。

その後、お決まりのようにアリサのお守りを依頼され、この事件の犯人探しに協力させられます。球場を回ってボウガンについて色々話していると怪しい影。警察と出会った所で、その怪しい影の男が逃げ出しますが捕まえられます。男は飯田孝平という名で、最近鴨に向かってボウガンを撃っていた犯人であることがわかります。

真犯人はもちろん飯田の犯行に見せかけるためにボウガンの矢を使って剣崎を殺していました。犯行時刻の夜にマウンド上にいる剣崎の急所を狙ってボウガンを撃つなんて人間離れした技はもちろん飯田にもできないので、トリックは足あとにまつわるもの。

そのトリックとは、マウンドに向かって梯子を立てかけてその上を通ってマウンドに行き、剣崎を呼び出して胸を矢で刺した後、梯子の上を通って最後にそのはしごを片付けておくというとんでもなく雑なもの。マウンドがグランド上でちょっと高くなっているからこそできるトリック。橘と岩代が死体を発見し、続いて駆け寄ってきた時にわざとらしく驚いて尻餅をついて足あとならぬ梯子あとを消していた山下昭二が犯人でした。

すがすがしいまでに雑なトリックをぶつけてきつつも、ミステリとして読ませるという趣向なんでしょうか。東川先生がどんどん本格ミステリから量産キャラ小説に転向して行ってます。

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