折れた竜骨は米澤穂信先生のミステリー作品。2012年に、週刊文春ミステリーベスト10で2位、このミステリーがすごい!で2位、本格ミステリ・ベスト10で1位、ミステリが読みたい!で1位という評価を得ています。
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12世紀のイングランドを舞台にした、異色の長編ミステリ。架空の島々であるソロン諸島を舞台に、呪われたデーン人との戦い、ソロン領主暗殺の謎解きなどが盛り込まれています。情景が浮かび上がるかのような、精緻な書き込みはさすがです。
評価が高いのは、魔法や呪いが成立するような世界でありながらも、それも踏まえて論理的に暗殺の推理を進めていくところではないでしょうか。ミステリーとしては、かなり本格の直球です。万人におすすめできる内容であり、今年読んだ小説の中では、文句なしに1位の面白さです、今のところ。2位は天地明察ですね。結局、みんなの評価はやっぱり正しい、と言ったところでしょうか。
主人公はソロン領主の娘アミーナ。ソロン諸島は、ソロン島と小ソロン島の2つから成り、領主のローレントが治めています。領主の屋敷がある小ソロン島は自然の要塞であり、侵入は容易ではありません。物語は、その小ソロン島の衛兵エドウィーが不可解な死を遂げたところから始まります。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
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エドウィーの死後、領主のローレントはある日からソロンに傭兵を集め始めます。娘のアミーナもその真意を測りかねていました。そうして集められた傭兵達とソロンの騎士、アミーナにローレントが「デーン人との戦いが迫っている」と言います。
デーン人は伝説にもなっているヴァイキングです。卓越した航海技術で多くの村で略奪を繰り返していましたが、今となってはその存在は忘れられています。
その日の夜、一人で作戦室に残ると言っていたローレントが翌日殺害されていました。犯人は誰にも見られることなく屋敷に侵入してまっすぐローレントの殺害に向かっていることから、その日の会議室にいた人物意外に犯人は考えられない、という状況でした。ただし、屋敷のある小ソロン島から、傭兵達はソロン島へと渡っており、2つの島の間を夜の間に渡るのは潮流の関係から不可能です。小ソロン島は、昼に東からしか船で渡れないという極めて守りに強い性質を持っていました。
この謎に挑むのが聖アンブロジウス病院騎士団の騎士ファルクとその弟子ニコラ。彼の目的は暗殺騎士を追うことです。暗殺騎士はさまざまな魔術を使い社会の裏側で暗躍する存在であり、ファルクの所属する病院騎士団は暗殺騎士を倒すことを目的としていました。ファルクは、殺害に使われたのが「強いられた信条」という魔術であると言います。これは、他人を走狗(ミニオン)という操り人形に変え、操られて誰かを殺したことも覚えていないという魔術です。
見どころは、ファルクが証拠と論理的推理から、被疑者を絞り込んでいく部分と、不死のデーン人軍団との戦いです。傭兵達もまた全員が一癖あり、数多ある推理小説の型にはまりません。魔術で青銅の人形を操るスワイド、超人的な弓の腕前を持つイテル、透明になる魔術道具を使役するコンラート、女性でありながら怪力と卓越した戦闘技術を持つハール・エンマ。
ファルクはまず、小ソロン島が密室であったという事実を否定します。暗礁に覆われているから侵入できないのですが、実は1年のうち数日だけ島の間を歩いて渡れる期間があったのです。エドウィーが暗殺騎士に殺されたのも、その事実を知り、島の警備を担っている人物だったから。そして、ファルクがソロンに来たのも、エドウィーの死が暗殺騎士の手によるものとしか思えなかったからです。
魔術師ではあっても子どもの体格であり戒律から操られていてもローレントを刺した剣を手に取る可能性が無いことからスワイドではない、手袋で隠している腕には親指が無いので剣を握れないイテルも犯人ではない、透明になれるが人影の目撃者があったことからコンラートでもない、そして犯人はハール・エンマであると結論づけます。しかし、ファルクのこの推理はハール・エンマに罪を着せるための誤ったものでした。ハール・エンマは、不死のデーン人であることを隠しており、体に血が流れていないので「強いられた信条」をかけることができません。
弟子のニコラが、ファルクこそがローレントを殺した暗殺騎士であると断言します。そして、ニコラとファルクの一騎打ちへ。戦いはニコラが勝利します。実は、ファルクは推理を進めるうちに、自分が暗殺騎士に操られてローレントを殺害し、その記憶が失われていることに気付きます。そして、すべてを修めるために、ニコラに真実を気づかせ戦いで自分を葬らせたのです。
最後は、ニコラが暗殺騎士を一人残らず倒すことを誓って、アミーナと別れて旅立って行きます。
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