恋と病熱 / 磯谷友紀、兄弟姉妹が忌み嫌われる世界に生まれてしまった子供たちの数奇な運命

「恋と病熱」は磯谷友紀先生の短篇集です。キーワードは「きょうだい」でしょうか。磯谷先生作品として先日、海とドリトルを紹介しています。

秋田書店の季刊誌「もっと!」に連載されていました。1話完結の短編ですが、すべて同一の世界観。兄妹や姉弟が忌み嫌われる世界で、一人っ子が当たり前の世界です。中国の一人っ子政策みたいに法的ペナルティはなさそうではありますけど。そんな世界に生まれてしまった兄弟姉妹達の心情や数奇な運命を描きます。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

この世界で出てくる兄弟姉妹はいろいろですね。片方が実親に育てられて、もう片方が養子に出されたり。兄弟が亡くなったらいきなり親元に呼び戻されたり。全員が里親に預けられて育ったり。

クロエとコランの兄妹

クロエが妹でコランが兄。クロエがある日、自分に兄が居ることを母親から告白されます。青天の霹靂といった感じですね。親は妹を育てることを選んで、兄を養子に出しました。そんな2人が学校で再会？します。表紙はこの兄妹。妹と仲良くなりたい兄と、それを拒む妹という構図。そりゃ兄の方はずっと妹の存在を知ってましたけど、妹はいきなり知らされたわけですからね。兄は妹の存在を恨むことなく、愛おしく思っています。最後はクロエが兄のことを「おにいちゃん」と呼びます。この世界では、そんな呼び方も絶滅寸前なんですね。この単行本の最後にも2人の話が出てきます。こちらは兄サイドから。養子に出されて妹を妬むも、その可愛らしい姿を見て全てを許してしまえたんですね。

アリーズとシックの姉弟

2人の親は兄弟姉妹を忌み嫌われるものとする社会から距離をおいたコミューンに属しています。姉のアリーズは、親の考え方とも少し距離を置いていますね。姉に執着する弟のシック。このコミューンのおかしいところは、兄弟の間で関係を持つことすら是としているところですね。最後は、弟の望みどおり姉弟でコミューンからも離れて暮らすことに。