突如現れた凶悪なダルマガエルに侵略され、安住の地を求めてアマガエルたちが旅立つところから始まるストーリー。次々と仲間が死んでいく中、生き残った2匹のアマガエル、ソクラテスとロベルトはツチガエルの国「ナパージュ」に辿り着きます。
百田尚樹先生の現代日本風刺小説。日本をモデルにしたナパージュという国が、ソクラテスの目には奇妙に見えて仕方ありません。豊かで争いもなく、不思議と外から侵略されないナパージュ。
ソクラテスから見たナパージュ
なぜナパージュが平和で豊かなのかを調べ始めて最初に行きあたるのが「三戒」の教え。三戒は、
カエルを信じろ
カエルと争うな
争うための力を持つな
というありがたい教え。三戒があるから争いにならないと説くデイブレイクというツチガエル。デイブレイクが説法する集会所では、「謝りソング」の合唱。ツチガエルが昔ひどいことをしたから、三戒や謝りソングができたということをツチガエルたちから教えられますが、誰も本当の由来を知らないという歪な描写。
ウシガエルがナパージュを侵略してこないのは、実際には老いた鷹のスチームボードや、強いツチガエルのハンニバルの存在があるから。ソクラテスがそのことを指摘すると「三戒によってナパージュは守られてるんだ。それを疑ってはいけない。」という合唱が帰ってきます。
そんなナパージュにウシガエルが攻めてきます。
カエルの楽園のモデル
読めば、誰でもわかるんですが、カエルの楽園の人や国、場所は全部モデルがあります。主なものを列挙しておきます。
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カエルの楽園 | 現代日本 | 由来 |
---|---|---|
ナパージュ | 日本 | JAPANを後ろからNAPAJに |
ナパージュの王 | 天皇陛下 | |
ツチガエル | 日本人 | |
ウシガエル | 中国人 | |
ヌマガエル | 韓国人 | |
デイブレイク | 朝日新聞 | day break(夜明け)→朝日 |
ハンドレッド | 百田尚樹 | ハンドレッド→百→百田尚樹 |
ガルディアン | 民主党(民進党)もしくは野党 | 守るのが国民ではなく憲法 |
プロメテウス | 自民党 | 原子力の暗喩でもある |
スチームボード | アメリカ合衆国 | 蒸気船で開国を迫った国 |
ツチガエルの毒腺 | 自衛隊 | |
エンエン | 韓国 | 怨怨、1000年怨みを忘れない |
三戒 | 憲法9条 | |
元老会議 | 国会 | |
ハンニバル | 自衛隊 | |
フラワーズ | SEALs | |
南の崖 | 東シナ海 | |
ナポレオン広場 | 広島 | |
西の小さな池 | 竹島 |
カエルの楽園の結末(ネタバレ注意)
ツチガエルを襲い始めたウシガエルを力で追い払うハンニバルたち。ところが、三戒に反しているという理由でデイブレイクらに扇動され、ナパージュの平和を脅かしたという理由で処刑されてしまいます。さらに、上空を飛ぶスチームボードに対しては、「帰れ」の合唱。スチームボードがいるから争いになると言わんばかり。
体の大きいウシガエルの侵略は止まらず、オタマジャクシは食べられ、大きいカエルも次々弄ばれて殺されていきます。
雨の中でウシガエルたちはツチガエルの手や足をちぎって食べ、まだ生きているツチガエルを空中に放り投げたり、濡れた地面に叩きつけたりして笑っていました。
やがてウシガエルたちはいたぶるのにも飽きたのか、ツチガエルを地べたに投げ捨てたまま、どこかへ行ってしまいました。
ソクラテスとロベルトがツチガエルに駆け寄ると、それはローラでした。
ローラは弱々しく笑いました。「大丈夫よ。ひどいことにはならないわ。だって、ナパージュには三戒があるんですもの」それがローラの最後の言葉になりました。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
徹底的なまでに滑稽に描かれるナパージュなんですが、私の感覚ではナパージュが滅ぶのは、デイブレイクでもガルディアンでもプロメテウスでもなく、「三戒」がどこから来たのか疑問にも思わずデイブレイクに心酔する民衆のせいですね。
現代日本に置き換えてみても、メディアや政治家は確かに残念な有様なんですが、悪いのはいとも簡単に偏向なメディアに影響され、正しく政治家を選挙で選べない国民です。そういう意味では、朝日新聞を批判する右翼の人たちの気持ちも私には理解できませんね。私は愛国心なんてほとんどなくて、メリットが無くなれば日本を出ればいい、くらいに思っているんですが、こうやって百田先生のように対立を煽ることでビジネスにつなげるのは素晴らしい手法じゃないかと思います。左翼の人たちは、本書を批判しようと思ったら、手に取って読まないといけませんからね。
- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: 単行本
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