ビッグデータとそれを解析するデータサイエンティストなる人たちが持て囃される世の中になって、統計学の重要性を訴えかける書籍が増えてきました。誰かが、最強の学問である、とかいってましたね。
「ヤバい統計学」もそんな統計学の重要性について述べる一冊です。翻訳のせいで読み難い部分はありませんでしたけど、このタイトルはいただけません。オリジナルのタイトルは「Numbers rule your world」で、邦題が「ヤバい統計学」。どうしてそうなった。これなんとかなりませんかね。「数字が世界を支配する」とかじゃダメなの?「Frozen」が超訳されて「アナと雪の女王」になっちゃう国ではむべなるかな。
肝心の中身は、読み解くのに統計学の力は要求されません。あえて言うなら統計的思考を理解することが求められる、というところ。いくつかの章立てですが、基本的な流れは社会の問題解決に統計学が生かされていることを紹介し、しかしながら現実にはそんなにうまくいってないよ、というオチも付けてきます。
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数字の話では、よく「平均」がミスリーディングに使われます。最初の章はその平均という「麻薬のような数値」に対して突っ込むところから。平均年収なんてのもそうですけど、中央値や最頻値を知った上で平均について語るべきですよね。統計学者が交通問題に挑みます。各高速道路内に信号を設置して利用者の「平均通勤時間」を減らすことに成功しますが、ドライバーの猛反発にあって骨抜きの信号制御を余儀なくされます。平均は下がっても、前が空いているのにアクセルを踏まない、という行動にドライバー達は耐えられませんでした。
確率の話では、やっぱり出てくるのが宝くじと保険。次のセリフでクスッと笑える人は、すでに確率を意識した考え方ができる人ですね。私は面白いと思いました。
あるパイロットの挨拶「みなさんの旅の最も安全な部分は終わりました。ご自宅まで安全運転でお帰りください」
統計学者が、宝くじ売り場で働く人間の不正を暴き出したという実例も面白い。そういえば、本書とは関係ありませんが、メンデルの法則を見出したメンデルも実験結果は歪められた恣意的なものであるというのが、専ら知られていますよね。
そこかしこに散りばめられたエピソードが楽しめると共に、統計や確率をバックボーンにした統計的思考を涵養する一冊。オススメです。
- 作者: カイザー・ファング,Kaiser Fung,矢羽野 薫
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 2011/02/19
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- 作者: カイザー・ファング
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