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最後の記憶 / 綾辻行人、あらすじと感想

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最後の記憶 (角川文庫)

「最後の記憶」は綾辻行人先生のホラー小説です。2006年に7年ぶりの綾辻先生の長編小説として発表されました。

ミステリ的な要素もあるのですが、それほどグロい要素のないホラー小説でした。若年性痴呆症が物語の中心に有ります。面白くありませんでした。ホラーがダメと言うよりも、話が迷走していて最初から最後まで分けがわからないのです。一応ミステリ的な伏線回収で決着はつくのですが、これでは主人公がタダの頭のおかしい人です。

あらすじと感想

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主人公は大学院で航空力学について研究していましたが、母が若年性痴呆症にかかって入院したことをきっかけに大学院を休学します。母方の祖母も同様の症状で亡くなったらしいと聞いて、母の症状が遺伝性ではないかと怯えています。

母親の病状は、新しい記憶がどんどん失われていき、バッタや稲光を異常に恐れるというもの。このバッタや稲光への恐怖が、母の幼い頃の「最後の記憶」だろうと主人公は考えます。

序中盤にかけて、これらが描かれるのですが、主人公の精神状態も危うくなっていきます。母の病気の症状が自分にも現れるのではないかと、物忘れに異常に怯えています。自分の頭に白髪を見つけただけで驚き、部屋に閉じこもったりもします。それだけではなく、ときおり母の恐怖を投影したかのような幻覚を見たり、バッタの音の幻聴が聞こえてきます。

本編中太字でなんの脈絡もなく挟まれる「バッタの音が」という部分が、主人公の恐怖を表しています。ですが、あまりにも頻繁で、読んでてもつながりが意味不明なため、ちょっとイライラしました。最後の記憶に苦しむ母の恐怖が漏れでて、自分に影響を与えているのではないかという、斜め上の妄想に走ったりします。

中盤からは幼馴染の女性と共に母方の祖母が亡くなった時の状況を調べに行きます。母親と違う症状であれば、遺伝とは関係ないということで安心できるかもしれないからです。叔父に連絡を取り母親が育った家に行きますが、母親は元々養子でもらわれてきたので、この叔父とは血がつながっていません。(血のつながっていない)母方の祖父から、母親の生家について聞き、血のつながった祖父のいる本家に向かいます。

主人公の精神状態が崩壊寸前となります。母方の祖母の症状については、確たる情報は得られませんでしたが、少なくとも白髪は共通していたことがわかります。また、男の子を切望する家に生まれた女の子出会ったために、(主人公から見た)祖母にきつく当たられてつらい思いをしていたことが明らかに成ります。

その後、現実世界から、妄想とも幻想ともつかない異次元の不思議な世界に迷い込みます。主人公の精神状態が崩壊寸前ですね。その世界では、ずっと子供たちが遊んでおり、母によく似た子どもも見つけます。中に影の薄い目の色のおかしい子どもが混じっていることに気づきます。幻覚に出てきていた、白装束のキツネも現れます。この世界に長く居ると、どんどん影が薄くなっていき世界を維持するためのエネルギーとして消化されてしまいます。現実から「いなくなってしまいたい」と考えた子どもが迷い込む世界で、母によく似た子どもは祖母に辛く当たられたことが原因で時空を超えてこの世界に迷い込んでいたと確信した主人公は、母の「最後の記憶」の意味に気付きます。

母の恐怖の記憶は、この世界から母を追い出すために、カッターナイフを持って子供たちを襲う主人公でした。チキチキというバッタの音は、このカッターナイフの音でした。稲光は子供たちを驚かせるためのカメラ。

最初から最後まで、精神状態の危うい主人公視点で進んできましたけど、全部妄想の域を抜けないのでどう解釈していいかわかりません。綾辻先生の作品は他にいいものがいくらでもあるので、あえてこれを読むことはないと思います。

最後の記憶 (角川文庫)

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