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純喫茶「一服堂」の四季 / 東川篤哉、安楽椅子探偵が猟奇殺人事件の真相を次々看破

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純喫茶「一服堂」の四季

東川篤哉先生の推理小説。どんな小説か述べる前にまずキャラクター紹介から、

キャラ名 説明
安楽椅子 みんなからヨリ子さんと呼ばれる純喫茶「一風堂」を営む女性
村崎蓮司 談社の雑誌「週刊未来」の雑誌記者
天童美幸 鎌倉からちょっと離れたド田舎の葉山町に暮らす女性
南田五郎 売れていない若手ミステリ作家
夕月茜 鎌倉周辺で発生する猟奇殺人を担当する刑事

安楽椅子という安直過ぎるネーミングはアンラク・ヨリコと読みます。そのまんま安楽椅子探偵モノ。一風堂を訪れたお客さんが遭遇した猟奇殺人の話を聞き終えると突如として人格が変貌して、自分の出したコーヒーと現在の推理を扱き下ろし始め、おいしいコーヒーと事件の真相を出すというスタイル。

メフィストに連載していてシリーズっぽくなるかと思いきや、最終話ではっきり最後とわかる叙述トリックを使ってきました。

あらすじと感想(ネタバレ注意)

第一話 春の十字架

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村崎蓮司はお世話になっている遠い親戚の緑川夫人に呼び出されます。要件は、夫が不倫しているかも知れないから張りこんで確かめろ、というもの。雑誌記者ならそういうのお得意でしょ、という感じ。緑川夫人の主人は考古学の大学教授で、緑川宅には弟子の大島という男が居候していました。

緑川宅の離れで研究にふけっているという名目で女と会っているとにらんだ夫人に言いつけられて一晩中見はる村崎。しかし、早々と撃沈して寝てしまいます。翌日離れから出てこない緑川の主人の様子を見に行くと、十字架に張り付けられているという光景が。扉にはチェーンロック、窓はすべてロックされているという状態。窓を破って中に入った大島がチェーンロックをはずし、扉から中にはいる村崎と夫人。中にいたのは外から見えた通り、絞殺されて十字架に張り付けられた主人の遺体。密室かと思いきや、死体の上部には天窓があり、開いていました。

ひょんなことから一風堂を訪れて、夕月刑事とヨリ子に事件のあらましを話す村崎。天窓が開いていて密室ではないので、何者かが主人を殺して天窓から脱出し、縄梯子でも使って降りたんだろうというありきたりな考察。村崎自身は犯人ではもちろんありませんし、力の弱い夫人、デブすぎて天窓を通れない大島も犯人ではない、と言いますがヨリ子が真相を見抜きます。

犯人は大島。十字架に張り付けられたのは、村崎と夫人がチェーンロックを外してもらうのを待っている間。外で主人を殺した大島は天窓から死体を中に入れて糸で釣った2枚の板で十字の体勢に。そのまま死後硬直で固まっていました。そのままでは2枚の板は固定されていないので、部屋に突入した後の仕上げが必要でした。

第二話 もっとも猟奇的な夏

天童美幸は幼馴染の関谷に頼まれて田んぼの草刈りを手伝うことに。お隣の田んぼは広大な面積で、草刈りの途中でその田んぼの持ち主である中園の屋敷を訪れる3人。3人ともいるはずの中園に出会えずに帰って行きます。その日の夜に中園宅で発見される中園の死体。ちょうど3人が訪れていた時間が死亡推定時刻で、死因は絞殺。そして、死体には大量の刺し傷と首に巻きつけられた大蛇で納屋にくくりつけられて張り付けにされているという謎のデコレーション。

後の捜査で生きたままくくりつけられていたことが判明。中園宅を訪れた3人の誰が犯人なのか一風堂であれやこれやと議論します。しかし、犯人は天童が最も疑っていなかった関谷。それもそのはず、草刈りの間ずっと一緒にいたのだから。関谷が仕掛けたトリックは、田んぼに掲げたカカシとして生きたまま最初から中園をくくりつけておく、というもの。顔はもちろんへのへのもへじを書いた布をくくりつけて隠しておきます。そうして、用を足すと言って数分間天童が顔を背けている間にカカシの首に掛けたタオルで絞殺。

思い返すと、関谷はなぜか用を足した直後にカカシのタオルで手を拭いている(と天童が勘違いした)所作や、カカシを蹴ろうとした婆さんに必要以上に激高していました。

第三話 切りとられた死体の秋

南田五郎は同期の売れっ子ミステリ作家に呼び出されます。「飲みに行こうぜ」という誘い。二つ返事で了承して、その作家東山敦哉の家に行きます。東山宅に行くと、東山のアシスタントをしている女性の中原さんが眠っていました。眠っている中原さんを起こさないように家を出て、鎌倉に繰り出す2人。そのまま朝まで飲み明かします。

翌日、中原さんと連絡が取れないという事で、中原さんのアパートに行くとそこにあったのは首と手が切り取られた死体。鑑定の結果、本人の死体であることが明らかになります。その後、しばらくしてから首と手は、外に捨てられているところが発見されます。

中原さんを殺す動機があったのは東山。豪邸の自宅とは別に仕事部屋のアパートを借りており、そこでユリアという女性と仲睦まじくしていたのをアパートの隣人が目撃していました。しかし、前述の経緯があり南田が東山のアリバイの証人となっています。

南田と村崎が一服堂で、東山が怪しいけどアリバイもある、ということを話していると件の東山が現れて自分の身の潔白を語り始めます。一連の話を聞いてヨリ子さんが得意の推理を突きつけます。南田が東山宅で見つけたのは、精巧な人間サイズドールに中原さんの首だけくっつけたもの。ユリアはもちろんドール。隣人が見たのも後ろ姿だけ。証拠も何もないのですが、「恋人(ユリア)の首を切って心が痛まないのか」と言われた東山は、泣いて自白を始めてしまいます。

最終話 バラバラ死体と密室の冬

ここまでに出てきたキャラクターが全員登場する最終話。第一話で伏線があり、村崎が初めて一服堂を訪れた時に夕月がちらっと話していたバラバラ死体の事件についてヨリ子に語ります。

夕月刑事がその日の捜査を終えて後輩と二人で覆面パトカーで署に戻る途中、後輩の同期の高橋刑事に出会います。その刑事によると、とある一軒家の電気がついたままで様子がおかしいと言います。前日にその一軒家の前で道路の陥没騒ぎがあり、そのときも顔を見せませんでした。窓からの覗くと案の定、死体っぽいものが見えます。

意を決して窓を破って踏み込むと首を切られた死体がありました。家中の窓と扉が施錠されていたので、犯人が中にいる可能性を疑いますが、探して出てきたのは風呂場にあるもう1人の死体。こちらはバラバラに切られていました。2つの死体は、その家に住んでいた岡部健二と兄修一のもの。バラバラになっていたのは巨漢の兄、修一。首を切られていたのが弟の健二。

登場人物としては、岡部兄弟の隣人である寺山、修一の内縁の妻元山が登場します。元山は借金の方に内縁の妻という立場でこき使われていて兄弟に恨みを持っています。家は密室ということで、考えられる推理としては弟の健二が兄を殺してバラバラにしてから、自分の首を切ったというもの。あるいは、部屋の窓を破った高橋刑事が実際にはすでに開いている窓から入っていた、など。

事件のあらましを夕月がヨリ子に話しているんですが、どうも時系列のおかしい表現がチラホラ。何回か戻って読みなおしてしまいました。タイトルに四季とあって春夏秋冬で進んでいると見せかけて、この事件は30年前に起こったことを話していました。第一話から30年経って年季の入ったおばちゃんになっている二人。話し方が変わらないんで気づきませんでした。

ヨリ子の推理は、30年前の家ならいわゆるボットン便所で、汚いのに目をつぶれば地下から穴で入れるだろうというもの。その穴から移動したとすれば、修一がわざわざバラバラにされていた説明が付きます。巨漢なので通せなかったがゆえのバラバラ。実際の殺害現場は隣の寺山宅。30年経ってわざわざこの事件のことを話し始めたのは、寺山が交通事故で亡くなったから。寺山の妻として登場したのは、当時修一の内縁の妻だった元山。ということで、動機の面でも推理を補完するものが出てきました。

村崎は週刊未来の編集長で夕月のパートナーになっています。天童と南田も相変わらずで、この4人が一服堂に一堂に会するシーンで終幕となりました。

各キャラクターにしっかりとした性格付けがなされるのは、いつもの東川作品なんですが、ちょっと本作はキレが悪かったかなという印象です。

純喫茶「一服堂」の四季

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