セカ就！世界で就職するという選択肢 / 森山たつを、海外に転職する場合もちゃんとしたスキルがないとダメ

「セカ就」という単語は日本だけじゃなく、世界を舞台にした就職にも目を向けてみようというコンセプトの就活のこと。著者の森山たつを氏は、日本オラクル→日産自動車→1年間の世界旅行→IT企業を経て世界7カ国で就職活動して内定だけ取った上で海外就職研究家を名のるに至っています。

本書はビジネス書としての一面もありますが、実話を元にした就活ライトノベルと呼べる作品となっています。

キャラクター紹介

キャラ名(年齢)	説明
川崎君夫(23)	ブラック居酒屋店長からインドネシア・ジャカルタの家具輸入販売会社へ
鈴木英子(26)	スーパー契約社員からシンガポールのコンピュータ部品販売会社へ
石川真美(29)	貿易会社派遣社員からタイ・バンコクの日系企業現地採用
本田俊輔(25)	ウェブ制作会社からマレーシアの同業会社へ転職
小宮山剛史(37)	超大手企業から香港で就職

先に重要なことを書いておくと、日本で就職に苦労している人やスキルのない人に対する福音となる部分はありません。すべてのキャラクターに共通する要素は、海外で通用するスキルや経験を持っているということ。

そうじゃないひとは英語を勉強しようが、現地語を勉強しようがお呼びじゃありません。「はっきり言い切れるスキルの見つからない人は今すぐは海外に行かないほうが良いでしょう」なんて書かれていますけど、普通に就職すればはっきり言い切れるスキルなんてないのでは？営業やブルーカラーは特に。

ブラック居酒屋店長でこき使われていた川崎君夫の場合、大学時代に世界を旅して回ったというバックグラウンドがあり現地語を勉強するのにまったく抵抗がありません。日本でやってきた居酒屋店長の業務もアルバイトの雇用から仕入れ、客単価を考えたメニュー考案など細やかな管理業務で言質でも求められるスキルとなっています。

鈴木英子はキャラクター説明だと、スキルがなさそうに見えるんですが大学は留学していて日本の就職活動に馴染めず失敗してしまったというパターン。多国籍な会社でコミュニケーション能力を活かして就職するケースですね。

石川真美の貿易会社派遣社員は、ひょっとしたら日本で派遣社員として働いている人にとっては嬉しい部分があるかも。日本で派遣から正社員になろうとするとそれなりに高いハードルがあって、派遣だと経歴としてカウントしてくれなかったりします。でも海外だと、派遣と正社員の形態に違いはなくて、前職でどんなスキルを活かして経験を積んだかだけが勘案されます。その点で、派遣であってもちゃんとスキルを身につけていけば海外でステップアップする可能性はゼロではない。そして何より、日系企業の現地採用という日本語が使えるという完全な差別化スキルを有しています。

小宮山剛史だけが30代。超大手企業でプロジェクトマネージャーを務めていましたが、昨今の不景気で人員を使い倒す会社に嫌気が刺しての転職。アジア転職で高給が得られる可能性があるのはどうやら香港とシンガポールに限られる様子。何気に日本の大手IT企業をディスった章になっていて、意思決定に膨大な時間がかかる煩雑な手続きや曖昧な要求、下請けを使い潰す姿勢が際立っています。終身雇用の大手企業だと給与的においしいのは40代以降なんでこの転職が吉と出るかどうかは最後までわからないのではないか、と私は思いましたけどどうなんでしょう。小宮山さんよりもしんどい会社は日本中にあるでしょうし、海外に転職したらオッケーだったなんてのはレアケースかも知れません。

著者のワンポイントアドバイスが時折挟まれるんですが、やはり英語が仕事で使われていても現地語を使ったほうがいいですし、日本流は総じて細かすぎるみたいですね。中国やインドネシアは独特のゆったりした感じがあります。

私も東南アジアに旅行に行くと、とにかくそのエネルギーに圧倒されます。どんどん伸びている感じ。日本は東京以外右も左もお年寄りばっかりですからね。少子高齢化で日本が衰退していくからダメだ、なんて私は思っていませんが、チャンスが多いのはこれから発展していく国なのは間違いありません。