2004年に長編実写映画として公開された「花とアリス」の前日譚が2015年に公開されたアニメーション映画の「花とアリス殺人事件」。岩井俊二監督によって作られたそのアニメーション映画を乙一先生がノベライズしています。
花とアリスは高校生になった荒井花(花)と有栖川徹子(アリス)の三角関係を描く作品で、その前日譚は中学校時代を描きます。私はいずれの映画も見ていないのですが、アニメーションは実写で撮影した上でその動画に合わせてアニメの作画を重ねるというロトスコープと呼ばれる方式で作られています。アニメだからこそ表現できる部分があるのかもしれません。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
母に着いて来て田舎町に引っ越してきた有栖川徹子。両親は離婚していて父の苗字は黒柳で仕事は刑事、母の名前は有栖川有紗で仕事は小説家。
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引っ越してきてすぐに隣の家から自分の部屋への視線を感じます。隣のおばさんはこまめにゴミ袋をチェックしてきて嫌な感じ。
訳がわからないユダと殺人事件の噂
転校先のクラスに入ると真ん中に2つの空席があり、前側の席を宛がわれます。掃除の時間にあからさまに避けられる2つの席、後ろの席には怪しげな魔方陣まで書かれていました。
小学校時代に同じバレエ教室に通っていた子と再会し、その学校にまつわる不穏なうわさを聞きます。1年前ユダが殺された事件。殺したのも4人のユダということで、全く訳が分かりません。
ユダは湯田、湯田の家に引っ越してきてしまったアリス
魔方陣を消そうとすると、クラスに不穏な空気が漂って陸奥睦美というクラスメイトに糾弾されます。その魔方陣は悪魔を封じ込めているとか。怪しげな呪文とともに、アリスが壊してしまった魔方陣を書き直した陸奥。
その席の生徒はずっと学校に来ていない荒井花という女子。家はアリスの隣でした。アリスを窓からのぞく視線は花のもの。
陸奥からユダと殺人事件の噂について聞くと、去年の三年二組にいた湯田という生徒がいて、4人の妻にアナフィラキシーという毒を盛られたことがわかります。
家に帰ると、自宅に「湯田輝男」宛のダイレクトメール、先住者の忘れていった荷物の中には「三年二組湯田光太郎」のテストの答案。自宅が、件の湯田の自宅であることが明らかになります。
花と出会って、湯田の行方を追うことに
アリスが直接荒井家に行き、ダラダラと引きこもっている花から直接湯田について聞きに行きます。そこで花から衝撃の告白、湯田を殺したのは花だといいます。
花はアリスの1歳上でしたが、卒業せずに3年生を2回目でした。同じ三年二組だった湯田が救急車で運ばれてそれっきりになって、それ以来登校していません。大人たちは無事だったというけれど、自分で確認したわけではありません。
アリスに協力してもらって湯田の行方を追います。湯田の父親の勤務先はわかっているので、父親の終業後を尾行。湯田の現在の家を突き止めます。
殺人事件の正体と生きていた湯田
花の口から断片的だった湯田の事件の詳細が明らかになります。バレンタインデーに告白代わりに記入済みの婚姻届けを光太郎に渡した花。光太郎は結構イケメンでクラスメイトからモテていました。その行動を受けてかどうか、光太郎はクラスの女子全員に婚姻届けを渡しました。それを本気にした女子が4人。発覚したのは、テストの答案の自分の苗字を湯田にした女子が居たことから。
アナフィラキシーショックは、その光太郎の行動で怒った花が後ろの席からこっそりクマンバチ入りのペチュニアを放り込んだことで起こりました。怒ったのは花だけは婚姻届けを渡されていなかったから。
アナフィラキシーショックで苦しむ湯田と、湯田の妻の座を巡っていがみ合う4人の妻という構図があって、噂に尾ひれが付いたのか笑いにされたのかしりませんが、転校してきたアリスの耳に入ったんですね。
結局、湯田光太郎にも合うことができて花に向かって「俺の背中に鉢入れたの、お前だろ!すげえ痛かったし大変だったんだぞ」「一生忘れないからな」。
その言葉を受けた花は「あれって、愛の告白だよね」「一生忘れないって、どんだけ愛してんのって話じゃん」。
陸奥が呪いを解いて登校してくる花
最後は陸奥がまた怪しい呪文とともに魔方陣を封印を解き放つ演出とともに花が登校してきて終わります。陸奥も第3の主人公といっていいくらいキャラクターが立ってます。
ノベライズにするとストーリーとしては一本道ではなく結構寄り道していたことが目につきます。いろんな人物に焦点を当てて、一見無駄に見えつつも次につながるセリフが飛び出すやり取りがあるからですね。花もアリスもなかなかに猪突猛進な性格であっけらかんとしていて楽しく読めました。
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