「式の前日」「さよならソルシエ」の穂積先生が描くファンタジーマンガ。うせもの宿は、少女のような女将がいるとても古い宿。ここに導かれてくるのは、なにか大切なものを亡くしてしまった人たちだけ。
何かを失った人たちを宿に連れてくるマツウラと、自身も何かを無くして宿に来たはずだけど客のなくしたもの探しを手伝うミステリアスな女将といった登場人物の謎が解き明かされていきます。
2巻と3巻のあらすじと感想(ネタバレ注意)
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1巻では何かを無くした人たちが宿を訪れるということでしたが、生きている人が来るのは例外だったようです。2巻では宿に来るのは「悔いを残して死んだ死人」と明言されます。
宿の景色が移り変わる「四季」は、宿を訪れる客の「死期」と同じ。相変わらずマツウラは宿に客を連れてきて、女将さんの機嫌を取ろうとしますが、女将さんはつれません。決して門を越えてこないことから、マツウラは生きている人物ということが明らかになります。
次々に訪れる客の失くしものを見つけていく中で少しずつ明かされていく女将の秘密。この宿でただ一人、女将だけはなぜか生前の記憶がありませんでした。マツウラは女将が記憶を取り戻すのをずっと待っているとも。
番頭だけがうせもの宿の中で、女将さんの記憶の秘密を知っていました。女将さんの名前は紗希(さき)。マツウラは本名松浦篤史で、2人は同じ養護施設の出身でした。犯罪を犯して服役し、出所してきたマツウラは保育士になっていた紗希と再会します。といってもマツウラは紗希のことをろくに覚えておらず、紗希に話を合わせるだけでしたが。
「あっちゃんは私の恩人なの」
と目に涙をためて話し始める紗希。年上で、施設の小さい子供たちの面倒をよく見ていたマツウラに優しく声をかけられたことで紗希は、自分も子供のために何かしようと決意して今の仕事に就いていました。一方、マツウラは皮肉なことに、施設を出てあっという間に身を落として犯罪に走っていました。最初は紗希のことをいいカモになると見ていたマツウラでしたが、純粋な紗希に接して毒気を抜かれます。
昼間の仕事を探して、まっとうな人生を歩もうと決意するマツウラでしたが、先に出所していた塀の中で知り合った柴崎という男が接触してきます。マツウラに犯罪を持ち掛け、紗希との生活を脅かそうとする柴崎。マツウラは柴崎を殺そうとしてナイフで刺しに行きますが、紗希が飛び出してきて柴崎をかばいます。
紗希は、マツウラが犯罪者に身を落として出所してきたことを知っていました。マツウラに更生してほしくて、知らないふりをしながら一緒に暮らしていました。そのマツウラが再び犯罪に手を染めようとしていることを知り、後をつけてきたところで殺人者になるのを止めようとしたために起きた悲劇。マツウラは自分がしてしまったことを受け止めきれず自らの首を紗希を刺したナイフで切ります。
紗希は、自分が救いたいと思っていたマツウラを殺人者にしてしまったことを嘆き苦しみ、すべての記憶を失くしてうせもの宿にいました。首を切って意識不明の重体になったマツウラは、生死の境をさまよいながら紗希と少しでも触れ合うためにうせもの宿に客を連れてきていました。
女将が記憶を取り戻したのは、マツウラがこらえきれずに宿の門をくぐろうとした時でした。門をくぐることは死者になることを意味します。マツウラに生きていてほしい、という思いから紗希としての記憶を取り戻します。紗希の「生きて」という願いを受け入れたマツウラは病室で目を覚まします。
最後は、変わらず何かを亡くした人を受け入れるうせもの宿の描写が。本当に最後までミステリアスだったのは、女将ではなく番頭でした。マツウラが生者で、女将が死者で2人は恋人同士だったってのは、過去エピソードに入る前からわかってはいましたが、結末として2人が結ばれるのではなく、マツウラが彼女の死を受け入れて生きていくという展開でした。せつないですが、これ以外の終わり方はなかったんでしょう。
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