「うつヌケ」は、作者の言葉ですが、「うつトンネルを抜けた人たち」のこと。
田中圭一先生は、会社勤めのサラリーマンをしながらマンガを描かれています。マンガ制作ソフトやWebコミックの会社での営業や管理職をこなしつつ、過去の偉大な漫画家の絵柄を再現しつつ下ネタやギャグを織り込むという作風を確立し、独自のポジションを獲得しています。
長い間、鬱病に悩まされていて、そのトンネルを抜けるまでを漫画化したのが本作。同じように、うつトンネルを抜けた人たちのエピソードが集まっており、いろいろな点で参考になります。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
作者が自分のエピソードを語った後で、うつトンネルを抜けた人たちへのインタビュアーとなり、うつとは無縁のアシスタントであるカネコが合いの手というかツッコミを入れるスタイルで話が展開していきます。
仮名で主に出版関係の人たちがインタビュイーとして登場するのですが、大槻ケンヂ氏や精神科医のゆうきゆう氏、直木賞作家の熊谷達也氏といった有名な方も登場します。
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強く感じたことから順に感想を書き出します。
うつトンネルを抜けた人たちのエピソードは、どれも強烈な生存バイアスがかかっています。うつを患うまでの流れにはある程度普遍性があり、自分の仕事に自信を失って自分を責めていくようになります。いろいろなきっかけで立ち直るんですが、同じきっかけがあっても立ち直れなかった人は二度と浮かんできませんよね。
セーフティネットはやはり大事。家族、友人、仲間といった人的資本は、ピンチの時に自分を助けてくれます。
結局、うつトンネルに入った人にどんなふうに声をかければ良いのかという判断は極めて難しい。辛そうにしている人に「休んだ方がいい」と声をかけても、「おまえなんか用なしだ」という風に解釈されてしまってはどうしようもありません。でも実際、うつの人は何を言われてもそう感じてしまうんですね。
マンガの力は偉大。ひとりひとりのうつになるエピソードを文章だけで伝えようとしたら、重くなりすぎてしまうところですが、絵とキャラクターのやりとりを介することですんなりと入ってくるようになります。
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 【電子書籍限定 フルカラーバージョン】<うつヌケ> (角川書店単行本)
- 作者: 田中圭一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/01/19
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