オーダーメイド殺人クラブは辻村深月先生の小説です。中学2年生の小林アンの心情を描きます。アフタヌーンでコミカライズされています。
中学二年生の四月、小林アンは突然友人たちから無視される。同級生の昆虫系(イケてないキャラ物男子)、徳川の言葉をきっかけに仲直りするが、「リア充」の、クラス内ヒエラルキー上位の女子グループの“世界の狭さ”に違和感をおぼえる。
実は、死の香りがする「退廃的な美」に強く惹かれ、独自の世界観に誇りを持っているアン。美術部の徳川が書いた絵「魔界の晩餐」にも強く惹かれていた。ある日、その徳川が河原で動物をふみ殺しているような現場を遠くから目撃。気になったアンは徳川に近づき、話をするうちに、お互いの中に共通するセンスを感じる。 母親の無理解、友人たちとの関係に、絶望にも似た閉塞感を抱くアンは、自分の美意識を理解できるのは徳川しかいないと確信、ついには「自分を殺してほしい」と依頼する。
普通の中学二年生とは違う、「特別な存在」となるために、今までになく斬新な、人々の記憶に残る殺人事件を計画するふたり。クラス内階級を超えて密かに相談を繰り返す。
アンと徳川の不思議な関係の行方は、そして二人で作る事件の結末とは…。オーダーメイド殺人クラブ|辻村深月|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブローより
この作品とは全く関係ないんですけど、最近「海街diary」というマンガを読み始めていて、登場する中学生のすずちゃんと同じ年齢だなーって思うと、このオーダーメイド殺人クラブはかなり難しくてややこしい世界に生きていますね。
今なら連絡手段が携帯電話での通話からさらにTwitterやLINEに移行していて、既読スルーなどをからめたややこしいコミュニケーションを面白おかしく描けそうです。
この小説は直木賞候補になったそうですけど、脂ぎった偉いおっさんたちがこの小説を読んでニヤニヤしながら中学生の心情に思いを馳せていたと思うと胸が踊ります。似たようなことを、「桐島、部活辞めるってよ」のときも書いたような気が。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
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女子ヒエラルキーの頂点に立つのが芹香。アンが倖と芹香の2人に無視されるようになったのは、芹香とライブに行った時にそのアーティストのファンを貶すかのような発言をしたため。ある日突然仲直りしたと思ったら、今度はアンと芹香の2人で倖を無視するようになったり。
3人でつるんでるように見えて、1人欠けるとその1人の悪口をえんえん垂れ流します。思春期女子のコミュニケーションって恐ろしい。そして、彼女たちは割と華やかなバスケ部のレギュラーの面々なわけです。意図的にパスを出さないとか、陰湿なことができるスポーツなんですね。
アンは、ほんのちょっとしたことで自分が無視されるようになるのが堪りません。そして、誰にも見せたくないスクラップブックを入れた机の引き出しは、鍵をかけていたのに無神経な母親によって覗かれてしまいます。その、私にはよくわからない絶望と、死体そのものへの強い関心から、「死にたい、それも誰よりも目立つように、印象に残るように」、という発想に至ります。どうしてそうなった。しかし、そのややこしい精神描写は読んでて引き込まれる面白さがあります。
美術部の徳川の絵に惹かれたアンは、動物の死体を袋に入れて蹴っている徳川を見て、自分を殺してと依頼。徳川は受諾。そうして秘密の2人の打ち合わせが始まります。
全くブレを見せない徳川でしたが、アンを殺す予定のその日に秘めたる思いを爆発させます。本当は殺したくない、そして本当に殺したいのはアンではなく櫻井先生だと。櫻井先生は、自分の父親とつきあっていました。お腹の中に子どもが宿り父親と櫻井先生が再婚することになって、幼い妹の心を守るために櫻井先生を殺しに行こうとしますが、アンが「私を先に殺せ」と言います。結局殺人はなされず、2人は何事もなかったかのように中学生活を終えることになります。
いわゆる中二病というやつを、ややこしくおいしく調理したって感じでしょうか。中学生のコミュニケーションがわかりませんが、ややこしさそのものが面白く感じられました。コミカライズ版は、どんなふうに表情が描かれているんでしょう。
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