コンプレックス・エイジ / 佐久間結衣(1)-(4)、20代半ば派遣社員のコスプレ女子に襲いかかる数々の試練

20代半ばのレイヤーの生きづらさをえがく佐久間結衣先生のマンガ。同名タイトルの読み切りから、連載へとステップアップ。

作中では初音ミクのコスプレも出てきたりはしますが、基本は劇中アニメの「マジカルずきん☆ウルル」のコス。主人公の片浦渚26歳は、高校から始めたコスプレがやめられない、やめるつもりなんてさらさらない派遣社員。彼女に襲いかかるのは、自分よりも若くてアニメキャラによく似た女の子の登場、レイヤーの親バレ・職場バレ、彼氏のコスプレ趣味に対する拒絶、高校からの友達の結婚をきっかけとしたコスプレ卒業といった、レイヤーのコンプレックスを刺激するイベントの数々。

ドロドロしたシーンだけじゃなく、コスプレ衣装を自作するためのウンチクや、コスペディアなるコスプレ用語集も巻末に登場したりして、何気に情報量豊富なマンガでもあります。

4巻までのあらすじと感想(ネタバレ注意)

ざっくり言ってしまうと、上で太字で書いた部分なんですけどね。

主人公の片浦渚26歳は家庭教師派遣業に勤める派遣社員の26歳、レイヤーとしての通り名は「凪」。細身で高身長のモデル体型の持ち主。劇中アニメ「マジカルずきん☆ウルル」のウルルコスに入れ込んでいます。そんな渚の高校時代からの友人でコスプレ仲間が馬場公子、彼氏持ち、仙台在住。公子を通じて大学生レイヤーの綾と志保と出会います。

綾は渚にあこがれていますが、綾のルックスは渚以上にウルルに似ています。一緒にコスプレするも、素直に自分以上の存在を認められない渚。というだけでなく、今の自分にはできないようなことも若さで軽々と乗り越えていくさまを魅せつけられます。その葛藤に打ち勝ち、コスプレ衣装作りを綾に指南する渚、大人の風格ですね。

お金も時間もいくらあっても足りないコスプレという趣味ではありますが、派遣社員として働いていると辛くあたってくる正社員も居ます。同じ女性である営業部の葉山がその一人。しかし、とあるコスプレ会場で葉山と偶然出逢ってしまいます。コスプレにかける情熱が同じという事で打ち解け仲良くなる2人でしたが、とある会場で撮られた写真に写っていた葉山の姿からコスプレ趣味がバレます。一枚だけならよかったものの、悪意ある同僚によってTwitterアカウントを掘り起こされ、すべてのコスプレ姿を会社に暴露されます。これにより精神を病み、実家の静岡に帰ることを余儀なくされます。

このときのイザコザ中の家での様子から、母にコスプレをやめるよう言われます。バレていないと思っていたコスプレ趣味は高校の頃からバレバレで黙認されていました。実はこの母が、1巻の最後に出てきた読み切り版コンプレックス・エイジの主人公のゴスロリ。渚は26歳ですが、34歳まで続けたゴスロリをばっさりやめたことを、父から教えられます。母に理由を尋ねると「理想との差に耐えられ無くなったから」。母に、自分がコスプレに対して真剣であることを伝え、続けることを認めさせます。完全オープンにして自宅にレイヤー友達の綾を招いて一緒にコスプレ衣装を作る渚。

高校時代の同級生千田光汰とは、同窓会でアニメ「マジカルずきん☆ウルル」が2人とも好きということで意気投合。光汰はアプリ開発で、ウルルのゲームアプリを開発したことをきっかけにアニメを見てドハマリしていました。付き合い始めるも、渚がコスプレ趣味を告白したことで光汰の抱くレイヤーへの偏見が見えてきてうまくいかずわかれることに。コスプレ趣味を告白するかどうかで葛藤するさまは、なかなかに悶絶もの。

渚に襲いかかる試練は、コスプレの外の世界だけでなく、コスプレ仲間からも現れます。1巻で渚にこき下ろされたレイヤーの「りう」が仲間に加わるも、かなりややこしい性格で引っかき回してきます。綾を邪魔と判断して、インターネット上の掲示板を利用して炎上させ、精神攻撃を仕掛けてきます。仲間内しか知らない情報を書き込んでいたこと、書き込んだタイミングからりうが犯人であることを突き止め、突き放す渚。

ここまで数々の試練を乗り越えてきた渚ですが、4巻の最後で最大の試練が。高校時代からずっと一緒にコスプレをやってきた公子が結婚を機にやめることを選択。

私は漫画好きのライトなオタクなんでわかりませんけど、後ろ指さされる女子はこんなに生きづらいのかと思わせるマンガ。絵が綺麗で、小ネタも豊富でかなりクオリティが高い。最終的に渚がどこにいきつくのか、母親と同じにはならないと思いますが。