ドラマ化された忘却探偵シリーズ5作目。総白髪で眠ると1日の記憶を全部消し去ってしまう最速の探偵掟上今日子の活躍を描きます。
「退職願」で謎となるのは死体。15個に分割されたバラバラ死体、野球場のマウンド上にあった取り降り死体、92歳で誰からも恨まれていない男性の絞殺死体、撲殺された後で水深1m半もない池に放り込まれた水死体。
今日子さんは、一見して意図不明の死体の状況を自分の体で再現して、最速の推理を展開します。「私にはこの事件の真相が、最初からわかっていました」という最速ならではのキメ台詞。
あらすじと感想(ネタバレ注意)
掟上今日子のバラバラ死体
様々な悪事を働いて大勢の人たちから恨みを買っていた男が、バラバラ死体死体となって発見されます。犯行現場もバラバラにされたのも被害者の部屋。部屋には鍵もかかっておらず、隠そうとする意図も感じられません。
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絞殺された後、1本のノコギリでバラバラにされた死体は、少なく見積もっても2時間はかかるであろう作業量。被害者を恨んでいる人たちは多いですが、容疑者は各々アリバイが成立していました。
バラバラ死体は、1本のノコギリで作られたものでしたが、指まで同じノコギリで斬られていたことに引っかかる今日子さん。バラバラ死体が、アリバイの偽装工作に使われていたことを看破します。
容疑者のアリバイは個別で成立していましたが、みんな5分から10分程度なら被害者の家まで来ることが可能でした。それを利用した連続での共同作業。絞殺だけした人や死体を切った人たちがみんなバラバラだったという真相を見事推理します。
掟上今日子の飛び降り死体
野球場のマウンドで発見されたベテランプロ野球投手の飛び降り死体。マウンドの真ん中なので周囲には当然その高さで飛び降りられる場所はありません。ネット裏のフェンスによじ登る今日子さんですが、その高さから飛び降りたとしても発見された死体になるような高さではありませんでした。
当日、上空にヘリが飛んでいたわけでもなく、クレーンが持ち込まれたわけでも当然ありません。一つずつ可能性をつぶしていき、警官がつぶやいた「名誉の死」という言葉に引っかかります。
被害者は高いところから飛び降りたわけではなく、盗まれたマンホールのふたに気付かず、地面の高さから穴の中に落下していました。その死を不憫に思った球場職員が名誉の死に仕立て上げるためにマウンド上に死体を運んでいました。
掟上今日子の絞殺死体
深夜二時にナースコールが押されて、ナースが駆けつけた時に発見されたのが92歳の男性の絞殺死体。動機の面から、その男性を恨む人物が浮上してこないということで今日子さんに依頼が舞い込みます。
裕福な男性ではありましたが、遺産はすでに相続が生前に決まっていて遺族との関係も良好、病院でも不審者は発見されていませんでした。男性は寝たきりだったので、絞殺するだけならわけありませんが、抵抗した形跡も残っていませんでした。
絞殺されたかに見えた死体は、自殺でした。点滴のチューブを首に巻いてスイッチ一つで動く介護用ベッドの仕組みを利用していました。捜査をややこしくしたのは、自殺しようと思っていたその男性が死が目前に迫ったときに、やはり助かろうとなんとかもがいたから。ナースコールが押されたのもその一つ。
掟上今日子の水死体
撲殺された後で水深1m半もない池に放り込まれた女性の水死体が発見されます。容疑者は逮捕済みで凶器も判明していましたが、死体が浅い池の真ん中に放置された理由だけがわかりませんでした。隠そうとしたわけでもなく、池の上で殺人が行われたわけでもありません。
死体が池の中に放置された理由は、汚れを洗うためでした。容疑者が隠したかったのは、死体ではなく死体に付いた犬の毛。犯行現場が自宅であることとペットの毛という証拠を隠そうとしていました。
全篇書き下ろしの5作目、今日子さんの記憶の秘密はやはり明らかにされませんでした。6作目の婚姻届でも、まだ明らかにされていないということでしたが、今日子さんの秘密が明らかにされるときは来るんでしょうか。
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